アスベストを原因とするがんのうち、最も発症数が多いのは肺がんです1)

患者数

国内の肺がんによる年間死亡者約7万人のうち、2,000~3,000人がアスベスト肺がんであると推定されています2)

特徴

肺がんには腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類の病理組織型がありますが、アスベストはすべての組織型の肺がんを引き起こす可能性があります1)。また、肺がんの発生部位にもアスベスト特有の特徴はないとされています3)。アスベストのばく露注)から肺がんが発見されるまでの期間は20~40年と報告されています1)
注:問題となる因子にさらされること。

症状(発見時)

アスベスト肺がんが発見されたきっかけを調査した研究では、4割は咳や痰などの自覚症状を認めたことであり、6割は健康診断や他の病気の治療中に異常な所見(胸部X線画像においてなど)が指摘されたことであったと報告されています4)

検査

アスベスト肺がんと診断するためには、「肺がん発症のリスクが2倍になるアスベストばく露があること」を確認する必要があります。これは、胸部X線検査またはCT検査による肺の画像所見、あるいは手術や気管支鏡などから得られた肺組織中の特異的な物質を調べることにより確認します5,6)

治療

通常の肺がんと同様に、組織型やステージに応じて手術、化学療法、放射線療法などが選択されます3)

アスベスト肺がんでは?と気になる方へ

アスベストばく露の有無がはっきりせず気になる方は、相談窓口や治療を受けている医療機関にご相談ください。

アスベスト相談窓口(全国の労災病院に開設されています)

タバコとの関係

喫煙は肺がんの最大の要因ですが、アスベストと喫煙の両方のばく露を受けると肺がんのリスクが高まります。アスベストのばく露と喫煙歴のない人が肺がんを発症するリスクを1とすると、アスベストのみのばく露では、肺がんの発症リスクは5倍、喫煙のみでは10倍、アスベストとタバコの両方のばく露がある場合は50倍になると報告されています6,7)

アスベストおよびタバコによる肺がん発症リスク(リスク比)


喫煙なし

喫煙あり
アスベストなし 1 10
アスベストあり 5 50

制度

アスベスト肺がんと診断された患者さんに対し、補償や救済制度が整えられています。

海外の状況と日本のこれから

かつて、欧米では第二次世界大戦前にアスベストを大量に使用して工業化し(アスベスト消費)、1960年頃からアスベストに関係する仕事に従事した労働者における肺がんや中皮腫の多発が知られるようになりました。米国では、アスベストが原因とされる疾患である中皮腫の患者数は2005年頃にピークに達しましたが、その後は減少傾向にあります。一方で、日本におけるアスベスト消費は欧米に約25年遅れて同様の経過をたどっており、アスベスト肺がんの増加傾向は2030年頃まで続くと推定されています2)

1)榮木 実枝ほか:がん看護セレクション 肺がん患者ケア,学研メディカル秀潤社
2)神山 宣彦:日職災医誌. 2014 ; 62(5): 289-297
3)内野 和哉ほか:日本胸部臨床. 2010;69(増刊):S155-S162
4)岸本 卓巳:Jpn J.Hyg. 2014; 69: S114
5)独立行政法人環境再生保全機構 診断書(石綿を原因とする肺がん用)
6)独立行政法人環境再生保全機構 石綿健康被害救済制度10年の記録
7)Hammond EC, et al. Ann NY Acad Sci 1979; 330: 473-490