肺がんになったとき、「仕事を続けられるのか、辞めなくてはならないのか」「職場に伝えるか、伝えないか」を悩む人もいるでしょう。どう伝えればいいかは、職場の環境によります。
体験談をもとに、病気について伝えた場合に起きたこと、伝えなかった場合に起きたことを紹介します。さまざまなケースから、自分にあった仕事との関わり方を見つけましょう。

CASE

上司に伝えて早期に復帰。「社会復帰は最大のリハビリ」を実感した

60代男性(手術時50代)|ステージⅠB

職場に伝えた場合

がんの告知を受けたとき、肺がんと診断されたことを正直に上司に伝えました。理解のある人で、「自分の命が最優先だ」と。手術から10日後に復帰して1か月間は定時に帰らせてもらいたいことを上司に伝えたときも、「よしわかった」といってくれました。当時は働き方改革という言葉はなく、残業して当たり前。そんな中、定時で帰らせてもらっていました。

執刀医から「社会復帰が最大のリハビリ」といわれたのが印象的で早期に仕事へ復帰しましたが、身体と対話しながら自分のペースで会社に戻ってよかったと思います。

上司に伝えて早期に復帰。「社会復帰は最大のリハビリ」を実感した

「察してほしい」ではなく正直に伝えてよかった

60代男性(手術時50代)|ステージⅠB

職場に伝えた場合

私の性分で、がんになったことを隠すこともなく、周りに正直に伝えました。「昼間に薬をたくさん飲んでいたり、急に咳き込んだり、痛そうな顔をしていても気にしないでくれ」と。当時は芸能人でがんにかかる人も多く、テレビでも2人に1人ががんになる時代といわれるようになってはいましたが、いきなり「肺がんになりました」と伝えられて驚いていたようでした。ですが、「察してほしい」と思うより、はっきりと伝えるほうがいいと思います。あまり深刻ないい方をしないことも大事ですね。

最初は伝えずにいたが、つらくなり職場の皆に伝えることに

40代男性|ステージⅢA

職場に伝えた場合

自分の経験から肺がん患者さんたちに伝えたいことは、職場には伝えたほうがいいということです。最初に「私はがんです。配慮は必要だけれど普通のことはできます。しかし、こういうことができないので皆さん協力してください」といえばよかったと後悔しているからです。

私は復帰後、肺がんのことは上司以外には誰にも伝えていませんでした。それがもとで、同僚との関係が悪くなってしまったのです。疲れたという発言が多くなって心配されたり、仕事を手伝ってほしいというと嫌みをいわれてしまったり。それがつらくなり、職場の人たちに伝えることにしました。

職場の人たちにどう伝えるのがいいかは、まず上司に相談しました。がんの治療にはこんな副作用があって、仕事をするうえでこんなことがあると知ってもらえるとありがたい。「大丈夫?」と聞かれるよりは、そういう症状があるということを“理解”してほしいと考えていました。それなら全員に知ってもらおうということで、私の場合は組合報に載せてもらいました。治療の経過やつらさ、治療を選択したときの気持ち等を伝えたのです。「私は仕事を続けたいのです。ただ、こういうことができなくなってしまった。皆さん協力してください」ということを発信することで、仕事とがん治療の両立につながると思いますね。

看護師さんに相談してみて、身体を動かす仕事も続けられた

70代男性(手術時60代)|ステージⅠA

職場に戻る前にしたこと

1日10,000歩も歩くような、身体を動かす仕事をしていたので、「こんな状態でも仕事に行っていいのかな」と看護師さんに相談しました。看護師さんからは「運動になると思うなら大丈夫ですよ」といっていただいて、手術後1か月で職場に復帰し、抗がん剤を打ちながら仕事をしていました。

仕事の量や内容を制限されたくないので伝えていない

40代女性|ステージⅠA

職場に伝えていない場合

仕事関係の人には病気であることを伝えていません。「無理をさせられないから」「これは難しいよね?」と、仕事量や内容を制限されたくない気持ちがあります。ステージⅣでもっと大変な治療をしている患者さんの中でも、夜勤やフルで働いている人もいる。そういう人が元気にされているので、自分もセーブせずできるところまでやろうと思っています。「無我夢中で働いているうちに治ってしまいました」となればいいですよね。

監修

国立がん研究センター中央病院
呼吸器外科 科長
渡辺俊一先生