症状

肺がんと血痰・出血

肺がんにともなう口からの出血

気管支や肺に異常がみられるとき、口から出る咳や痰に血が混じることがあります。その出血の原因が、肺がんによるものである可能性があります。
一般的には、口から血が出た場合は、気管支や肺のほかに、食道・胃・十二指腸など上部消化管、のど・口の中・鼻の中などからの出血が考えられます。
気管支や肺から出血したとき、痰に血が混ざったり(血痰)、咳と一緒に血を吐き出してしまうこと(喀血)があります。
一方で、食道・胃・十二指腸など上部消化管の出血の場合は、嘔吐とともに血を吐き出してしまうこと(吐血)が多いです。
どこからの出血かわからない場合は、出血の部位やその原因となった病気を突き止める必要があります。

血痰とは

血液の混じった痰のことです。
血液がほとんどを占める場合は、血痰ではなく、喀血といいます。

痰に血が混じる原因としては、肺や気管支からの出血、のどからの出血、鼻や口の中からの出血、食道や胃からの出血が考えられます。肺や気管支からの出血が痰に混じった血痰の色は鮮血に似た赤、食道や胃からの出血が混じった血痰は暗い赤色や茶色であるのが特徴です。

血痰は、肺がんに限らず、呼吸器の病気でしばしばみられ、肺結核、非結核性肺抗酸菌症、肺炎、気管支炎、気管支拡張症、肺梗塞などでもあらわれます。

肺がんと血痰の関係

肺がんはできた部位によって肺門型(肺の中心部にできたがん)、肺野型(肺の端にできたがん)に分けられ、型によって症状の出方が異なります。
肺門型の肺がんは気道に近い部位にでき、気道が刺激されるので、早期のうちから咳や喀痰、血痰があらわれることがあります。一方、肺野型の肺がんは気道から遠い部位にできるので、多くの場合、進行するまでは血痰はあらわれにくく、無症状で経過します。術後に血痰がでた場合は再発が疑われます。

血痰がでたらどうする?

血痰がでる頻度が高い場合、医療施設を受診し、原因に応じて専門の医師を紹介してもらいましょう。
鼻や口の中、のどからの出血であれば耳鼻咽喉科、肺や気管支からの出血であれば呼吸器科、食道や胃からの出血であれば消化器科が専門です。

肺がんが疑われるときは、呼吸器科で痰の中にがん細胞が混じっていないかどうかの検査(喀痰細胞診)を行います。同時に、血液検査、胸部X線検査(レントゲン検査)を行うこともあります。
これらの検査で症状の原因となる所見がみつかったら、胸部CT検査や気管支鏡検査、蛍光気管支鏡検査を行い、肺がんが疑われる部位を特定します。次いで、肺がんが疑われる部位の組織または細胞を取って、肺がん細胞の有無と組織型を判定し、がんかどうかの診断を行います。

肺がんであることが確定したら、がんの広がりを調べるために画像による検査(造影CT、PET(ポジトロン断層撮影法)、MRI、骨シンチグラフィ)を行い、臨床病期(ステージ)を決定し、治療方針を決めます。

血痰や喀血は肺がん以外の病気でもみられる

血痰や喀血がみられたからといって、必ず肺がんがあるというわけではありません。気管支や肺からの出血の原因となる病気としては、肺がんのほかに肺結核や肺炎、気管支炎、気管支拡張症などがあります。
原因となった病気を突き止め、止血する必要がありますので、急いで医療機関を受診することが大切です。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生