症状

チェックしたい肺がんでみられる初期症状は

肺がんの初期症状と進展にともなってあらわれる症状

肺がんには特有の症状があるわけではありません。ただし、咳や痰、発熱など、風邪によく似た症状はよくみられます。
風邪とは違い、肺がんによる咳や痰はなかなか改善しないことが特徴です。咳や痰が長引くときや血痰が出たときは、肺がんの可能性も考えて、病院を受診しましょう。
肺がんが大きくなったり、周囲の組織に広がったり、ほかの臓器に転移したりすると、その部位に特有の症状があらわれます。

たとえば、気管支の入り口に近い部分で肺がんが大きくなると、気管支がせまくなり、息を吐きにくくなるため、ぜんめい(ゼーゼー、ヒューヒューいう音)が起こります。食道に広がると物を飲み込みにくくなり、肋骨や周辺の神経に広がると胸痛が起こります。声帯に関係する神経に広がると、声がかすれるという症状もあらわれます。上大静脈の近くにあるリンパ節や上大静脈そのものにがんが広がると、上半身の血液が心臓にもどりにくくなるため、上半身のむくみや息切れ、めまい、頭痛、眠気などの症状があらわれます。

肺の上端(肺尖端)から腕の神経にがんが広がると、腕の痛みやしびれ、まひ、筋力低下などの症状(パンコースト症候群)があらわれ、首の交感神経に広がると、まぶたの垂れ下がりや瞳孔の縮小、眼の落ちくぼみ、発汗減少などの症状(ホルネル症候群)があらわれます。心臓を包む膜(心外膜)や肺を包む膜にがんが広がると、胸痛や不整脈、胸水貯留や呼吸困難がそれぞれ起こります。

骨に転移すると疼痛、病的な骨折が起こります。脳に転移すると、脳がむくむため頭痛や吐き気が起こります。転移部位が中枢だと手足のまひ、小脳だとふらつき、部位によっては言語障害や意識障害が起こることがあります。

また、がんの種類にかかわらずみられる症状として、食欲不振、倦怠感、発熱、体重減少などがあります。

表 肺がんの主な症状

呼吸器の症状 咳、痰、血痰、息切れ、呼吸困難
がんが広がった部位による症状
食道 飲み込みにくさ
肋骨、肋骨の神経 胸痛
声帯に関係した神経 かすれ声
上大静脈、
上大静脈に近いリンパ節
上大動脈症候群(顔や上半身のむくみ、頸静脈や上半身の静脈の怒張、息切れ、めまい、頭痛、眠気)
肺の上端、胸郭外
(腕の神経、首の交感神経)
パンコースト症候群(腕のしびれや痛み、まひ、筋力の低下)ホルネル症候群(まぶたの垂れ下がり、瞳孔の縮小、眼の落ちくぼみ、発汗の減少)
心膜(がん性心膜炎) 心膜液貯留による動悸、不整脈
胸膜(がん性胸膜炎) 胸水貯留による胸痛、呼吸困難
転移した部位による症状
痛み、骨折
頭痛、吐き気、手足のまひ、ふらつき、言語障害、意識障害
肝臓 全身のだるさ、黄疸、肝機能障害
副腎 クッシング症候群(顔のむくみ、肥満、血圧上昇)、悪心、嘔吐、腹痛、低血圧、ショック症状
その他の症状 食欲不振、倦怠感、発熱、体重の減少

症状のでる時期は肺がんのできる部位によって異なります。
肺の中心にがんができる肺門型肺がんは、早期から咳や痰、血痰などの症状がでますが、肺の端のほうにがんができる肺野型肺がんでは初期症状はほとんどなく、進行期になって息切れや呼吸困難などがあらわれます。

症状以外に確認すること

症状だけで肺がんかそうでないかを見分けることはできません。
肺がんにかかる危険性(リスク)が増す要因には、自分や家族の喫煙(タバコ)、家族が肺がんを含めがんにかかったことがある(家族歴)、生活環境に肺がんのリスクを高める化学物質(石綿、コールタール)がある、などがありますので、受診の前に確認しておきましょう。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生