肺がんと肺炎の関係とは

肺がんと肺炎の違い

肺がんと肺炎の症状は、いずれも咳や痰、息切れ、発熱などよく似ています。症状だけでどちらの病気かを区別するのは難しく、誤診を避けるためにも、胸部X線(レントゲン)検査や喀痰細胞診、血液検査などをおこないます。

肺がんと肺炎の画像には、いくつかの違いがみられます。
肺がんの胸部X線画像には、円形や楕円形をしたがんの塊が白く映り(腫瘤影)、CTではリンパ節の腫れや、がん周辺の血管や臓器の様子も映ります。
肺炎のX線画像には、正常であれば黒く映る肺に境界がはっきりしない白い影が映ります。白い影は、肺炎の種類によってすりガラス状にみえたり、斑状やあみ状であったり、気管支の形が浮かび上がっていたりと、いろいろです。

肺がんと併発する肺炎

肺がんは、しばしば肺炎を併発することが知られています。
これは、肺がん患者さんには高齢者や喫煙経験者が多く、慢性的な呼吸器疾患を持っていることが多いためです。また、肺がんによって気道が閉じたり、狭くなったりすると、細菌の侵入を防ぐことができず、肺炎(閉塞性肺炎)が起こりやすくなります。さらに、肺がんの手術後の合併症あるいは放射線治療や薬物療法の副作用として肺炎(間質性肺炎)を発症することもあります。

なお、間質性肺炎は、ガス交換をおこなう肺胞と肺胞の間に炎症が起こる病気で、閉塞性肺炎は細菌の感染により肺胞の内側で炎症が起こる病気です。

手術や治療後の合併症としての肺炎

肺がんの手術後は、痛みや麻酔の影響で痰を上手くだせなくなるため、細菌に感染して肺炎にかかりやすくなります。細菌の感染による肺炎は、抗菌薬で治療を行います。

肺がんに対する放射線治療後、間質性肺炎を発症することがあり、このような肺炎を放射線肺炎(放射線肺臓炎)といいます。放射線肺炎は、放射線によって肺の組織が壊れることによって発症し、多くの場合、照射後1〜6ヵ月以内に起こります。

肺の障害は肺がん治療薬の副作用で起こることもあり、それらを薬剤性肺障害といいます。
肺がん治療に使われる薬剤では、EGFR阻害剤やALK阻害剤などの分子標的治療薬が間質性肺炎を引き起こします。免疫チェックポイント阻害剤も免疫関連副作用の一つとして間質性肺炎を引き起こすことがあります。抗がん剤も使う薬の種類によっては薬剤性肺障害を引き起こすことがあります。

間質性肺炎では乾いた咳や発熱、呼吸困難などの症状があらわれますが、無症状の場合もあります。緩やかに進行することもありますが、急激に進行する場合もありますし、重症になると急に悪化し、命にかかわることもあります。
無症状や軽症のときは、症状を和らげる治療を行うだけで肺炎は自然に治ることが多く、症状が出るほど進行したときは、ステロイド製剤による治療を行います。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生