遺伝子検査

ALK融合遺伝子とは?

ALK融合遺伝子とは、何らかの原因によりALK遺伝子と他の遺伝子が融合してできる特殊な遺伝子のことです。非小細胞肺がんで、がん細胞の増殖にかかわる遺伝子として発見されました。ALK遺伝子は細胞の増殖を促す働きがあり、通常はスイッチのON、OFFがうまく制御されています。しかし、ALK遺伝子が他の遺伝子と融合してALK融合遺伝子ができると、スイッチが常時ONになった状態になり、ALK融合遺伝子から発現するタンパク質(ALK融合タンパク)によってがん細胞の増殖が進みます。ALK融合遺伝子のあるがんは、増殖が比較的速いとされています。

ALK融合遺伝子は、非小細胞肺がん全体の約3〜5%に認められます。非小細胞肺がんのなかでも腺がんに多くみられます。また、たばこを吸わない人、比較的年齢の若い人に多くみられることもわかっています。また、EGFR遺伝子変異のある患者さんではALK融合遺伝子はほとんど認められませんし、逆にALK融合遺伝子のある患者さんでは、EGFR遺伝子変異はほとんど認められません。

肺がんとALK融合遺伝子について

融合遺伝子とは?

ALK融合遺伝子とは、ALK遺伝子とEML4遺伝子の一部が融合した特殊な遺伝子です。
ALK融合遺伝子からは、機能に異常をきたしたALK融合タンパクが作られます。

ALKタンパク質とは、細胞の表面に存在する分子(タンパク質)で、ALK遺伝子の情報をもとに作られます。正常なALK遺伝子から作られたALKタンパク質の場合、特定のタンパク質が結合すると活性化されて細胞の増殖を促す信号を発信します。しかし、ALK融合遺伝子から作られたALK融合タンパクは、特定のタンパク質が結合しなくても活性化しており、常に細胞の増殖を促す信号を発信しているため、がん細胞が際限なく増えていきます。

ALK融合遺伝子のある肺がんは、非小細胞肺がん全体の約3~5%を占め、非小細胞肺がんのなかでも腺がんの4~5%を占めています。その他の組織型で見つかることはほとんどありません。
ALK融合遺伝子は非喫煙者で見つかることが多いとされていますが、高齢者や喫煙者でもしばしば見つかっています。なお、ALK融合遺伝子とEGFR遺伝子変異、ROS1融合遺伝子が同時に発現することはほとんどありません。

ALK阻害剤について

ALK融合遺伝子が検出されたら、ALK阻害剤で治療を行います。
ALK阻害剤は、ALKのチロシンキナーゼという部位に作用して、細胞増殖を促す信号の伝達を止め、がん細胞を死滅させます。ALK融合遺伝子のある患者さんは、抗がん剤で治療をするよりもALK阻害剤で治療をした方が、がん細胞の縮小効果が大きく、がんが増悪するまでの期間が長いことがわかっています。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生