検査法

MRI、骨シンチグラフィ、PET検査

転移検査に適したMRI

Magnetic Resonance Imaging(核磁気共鳴画像診断法)のことです。
磁場の中での水素原子核の状態を反映する検査です。

磁場の中での検査ですので、金属類の持ち込みは制限されます。心臓ペースメーカー、大腿骨などの人工骨頭の手術を受けた人、脳動脈瘤のクリッピング手術を受けた人、金属ステントの留置を受けた人などはMRIを受けられない場合があります。
現状では検査にかなり時間がかかりますので、動く臓器には不向きです。
また、水素原子がたくさん存在する必要がありますので、肺もあまり適していません。肺の中には水素より酸素、窒素のほうが圧倒的に多く存在しますし、動く臓器だからです。

肺がんそのものの診断にはMRIの有効性は少し精度が落ちますが、MRIは主に転移を見つける目的でおこなわれます。

特に脳転移の検査には有用です。脳は動きませんし、水分が十分にあります。
次に縦隔のリンパ節転移の検査です。比較的動きは少ないですし、水分は十分にあります。
ただ、縦隔リンパ節は造影のCTで画像診断としては十分な情報を得られますから、MRIの使用は限定的です。

骨・骨髄の転移検査にも有用ですが、今のところ全身の骨を撮ることが難しいので、強く転移が疑われる部分のみの検査となることが多いようです。
CTとよく似た装置ですが、検査室のシールドは厳重で、検査中ドンドコと太鼓のような音がします。

X線を使うCTと違い、ラジオ波(FM放送と同じ)を使いますので、被曝の危険はありません。
ガドリニウムという造影剤を使用して検査の精度を高めることがあります。

転移検査に適したMRI

骨への転移を調べる骨シンチグラフィ

アイソトープ検査のことです。
アイソトープというのは日本語では「放射性同位元素」のことで、骨シンチグラフィは骨組織に集まる性質をもつ放射性薬物を注射した後、特殊なカメラで撮影し、全身の骨の状況を調べる検査です。骨にがんが転移しているかどうかを調べる目的でおこなわれます。
放射性薬物には、99mTc(テクネシウム)という元素を付けたリン酸化合物を使います。テクネシウムリン酸化合物は骨の代謝や反応の強いところに集まる性質があるので、注射の後で、テクネシウムが集まった場所から出るガンマ線をガンマカメラで写します。

放射線は微量で、消失も速いので被曝の程度は最小限に抑えられます。
注射から画像検査まで3時間程度の間隔が必要です。
患者さんの話を聞くと、ガンマカメラで撮影するときのベッドが硬く、時間もかかるので必ずしも「安楽」とはいかないそうです。

弱点は、テクネシウムは「転移している部分に集まる」のではないということです。骨折箇所や骨の病気にも集まります。また、転移があれば必ず集まるとも限りません。
結果として、写真上では陽性でも転移があるかどうかは即断できず、経験のある臨床医の診断が必要になります。

骨への転移を調べる骨シンチグラフィ

がんの転移を調べるPET検査

がんの転移を調べるPET検査

PET検査とは、「陽電子放出断層撮影」という意味で、Positron Emission Tomography(ポジトロンエミッショントモグラフィー)の頭文字からPET(ペット)と呼ばれています。放射線薬剤を投与し、その分布を特殊なカメラでとらえて画像化します。

検査機器は骨シンチグラフィのような単純なガンマカメラではなく、コンピューター処理された断層写真となります。

肺がんの検査でPETが行われるのは、肺がんの確定診断後および治療中や治療終了後に転移の有無や部位を調べるときです。

肺がんのPET検査で広く使用されている放射性医薬品(ガンマ線という放射線を放出するアイソトープを用いた注入剤)は18F-FDG(18F-フルオロ・デオキシ・グルコース)というものです。このため、18F-FDGを使用するPET検査のことをFDG-PETと呼ぶことがあります。

がん組織の多くはブドウ糖代謝が活発なため、FDGはがん組織に集まります。そこから発生するガンマ線をとらえることによって、がんの有無やおおよその位置がわかります。
PET検査では、18F-FDGを注射して1時間ほど安静にした後、PET装置でガンマ線を検出します。

最近は空間分解能を補う目的で、X線CT(通常のCTです)とほぼ同時に画像を撮ることのできるPET-CTが広まりつつあります。PET検査が、「ブドウ糖の取り込み」というがん細胞の働きを画像化するのに対し、CT検査はX線を使って腫瘍の位置や大きさを画像化します。これら2つの画像を重ね合わせること(フュージョン)で、腫瘍の性質(良性か、悪性か)や位置についての詳しい情報が得られます。PET-CT検査の流れはPETだけの場合とほぼ同じで、費用の目安はおよそ10〜12万円くらいです(保険適用の場合はこの1〜3割負担)。

PET検査の弱点は、他のアイソトープ検査と全く同じで、グルコースが「がん細胞だけに集まるわけではない」ことです。がん以外のグルコース代謝の活発な組織、炎症部位や正常な脳にもFDGは高濃度に集積します。このため、本当はがんであるのに正常または良性と判断してしまう偽陰性や、正常または良性なのにがんと判断してしまう偽陽性という間違いが起こることがあります。

サンプルの写真をご覧ください。頭部に強い集積がみられます。これは脳組織にFDGが高濃度に集まった結果であり脳転移を示しているのではありません。

その他の部分でも、炎症を起こしやすい部位であれば、PETの結果だけでは「がんである」という診断はすぐには下せません。
逆に、がんであってもFDGの集まらないものもあります。

新しい検査で有用性が期待されていますが、「万能であり、これひとつですべてOK」というわけにはいかないのです。

がんの転移を調べるPET検査

※矢印はがん細胞を示す

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生