検査法

CTの撮り方と画像の種類

レントゲンとの違い

レントゲン(X線検査)は、X線を当てて、肺の全体像を平面画像としてとらえる検査です。

造影剤を使用せずに胸部だけに行うときは、胸部単純X線検査といいます。
肺がんを探すとき(スクリーニング)や治療後の経過観察のとき、再発・転移の部位や胸水の有無を確認するときに行われます。

X線の撮影写真では、骨や心臓は白く写り、肺は黒く写ります。肺の中に白い影があるときには肺がんが疑われます。ただし、肺炎や肺の良性腫瘍などの病気によっても白い影が出るので、X線検査だけで肺がんであると確定することはできません。逆にいうと、X線検査で異常がなかったから肺がんではないとも言い切れません。

通常、立ったまま背中からX線を当てる正面像、腕を上げて体の横からX線を当てる側面像を撮影します。これら2つの写真を併せることで、肺をより立体的にとらえることができます。

胸部X線検査による肺がんの検出感度は60〜80%程度、胸部CT検査による検出感度は93〜94%ですので、CT検査の方がX線検査より肺がんを検出するのに優れているといえます。

CT検査のメリットは、X線検査よりも画像の精度が高いため、小さながんや、臓器のかげに隠れたがんの見落としを防げる可能性があることです。デメリットは、放射線の被ばく量がX線検査と比べ多くなります。また、検査費用が高いという点があげられます。

CT:断層撮影

「ある物体の全体をそのまま投影した影絵の形で見るよりも、その物体を輪切り、あるいは薄切りにしたほうが内部が良くわかるのではないか」

これはその仕事にかかわっているすべての人間が夢見ることでした。最初はX線撮影装置そのものを撮影中に移動させて薄切り像を作りました。これを断層撮影(Tomography)といいます。

ただ、この機械的な断層撮影は周囲のものが写り込むという欠点をもっており、画像も判定するのにかなりの経験を要するぼやけた像でした。

また、周囲のものが写るために骨の後ろに存在するものなどはほとんど撮影不可能でした。例えば頭蓋骨の中身(脳みそです)はレントゲンでは見ることができなかったのです。

しかし、コンピューターの発達に伴い、ある物体にX線を何本もビーム状に照射してそのエネルギーを測定し、ビームの位置関係と減衰の度合いを計算することによって物体の中身を推測し、さらにこの情報を平面図として表現できるようになりました。

これをComputed Tomographyといい、略してCTと呼びます。

CTの撮り方

CTの撮り方

人間を一本の円柱と考えると、CTを実際に撮るときには輪切りにした方が簡単で、効率がよくなります。従ってCTを撮るときには移動可能なベッドに横たわり、大きな輪の中に入っていきます。

この輪の内部にX線の線源(X線を発射する装置)と検出器があり、ちょうど体をはさむようになっています。撮影のときは線源がX線を発射し、体を通したX線を検出器が受け取りながらぐるりとまわります。(実際にはまわっている検出器は見えません)

検出器が1回まわるごとに一枚の体の輪切りの像ができます。ベッドを少しずつ移動しながら、これを繰り返すことで体全体の輪切りの像を見ることができます。

通常、診察室で見せられるCTの写真はこれらの像を通常のフィルムに出力したものです。胸部のCTの場合は足元から見た形で撮影しているので、向かって左が自分の体の右側になります。寝転がっている自分をもう一人の自分が足元から眺めていると考えてください。

CT画像の種類

CT画像の種類

CT画像を見ていただくと黒い部分と白い部分があることに気づかれると思います。白いほうを肺野条件、黒いほうを縦隔条件といいます。ほとんどの場合、同じデーターを2種類の出力で見せているのです。

何故このようなことをするのかというと、デジタルデーターの塊を見ても体の内部を想像することはできないからです。判定するためには、もったいないですが一旦アナログデーターに戻し、画像として見る必要があります。CD、DVDあるいはビデオと同じです。

このときに見たいものをある程度強調しないと見落としが発生します。そこで、肺の中の細い血管、気管支、肺胞(肺を構成している小さな袋です)などを強調し白く見えるのが肺野条件です。

一方、心臓、大動脈、リンパ節、食道、脊椎骨などが集中している縦隔の状況を確認するために出力し、黒っぽく見えるのが縦隔条件です。

2種類の出力をしてもデーターは既に撮り終えた1種類ですから、余分にX線を浴びるわけではありません。

造影CT

造影剤を点滴しながらCTを撮ることです。血管に造影剤が入るとその血管はフィルムの上で白く写ります。塊があったとしてその塊の中に細い血管が大量にあればその塊も白っぽく写ります。

これを原理として造影CTの応用範囲は大変に広いものです。この項では肺がんの診断での重要な点だけにとどめます。

肺がんの診断での造影CTの最大の目的はリンパ節転移の確認です。リンパ節は正常でも肺門部、縦隔にたくさんあるのですが、がんが転移すると大きくなります(腫大するといいます)。

このとき血管と区別のつきにくいことが多いのです。そこで造影をすると血管はより白くなって見えます。これで区別がつくというわけです。

また、肺以外の別の臓器への転移を探すときも造影剤を使わないとわかりにくいことが多く、アレルギーがない限りは必須の検査法になります。

造影剤のアレルギーは軽度のものは少なくなく、顔が赤くなる、蕁麻疹が出る、軽いむかつきが出るといったことが時々あります。

また、まれに重いアレルギー症状が起きることもあります。

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生