肺がんにおける先進医療とは

先進医療とは?

大学病院などでは日夜新しい治療法や診断法が研究・開発されています。そのうち有効性・安全性が確かめられたものだけが保険診療の対象となります。
「先進医療」とは、まだ保険診療が認められていない新しい医療技術に対して、保険診療とすべきかどうかの評価が必要であると国が定めた治療法(評価療養)です。効果・安全性を科学的に確かめる段階にある高度な医療技術で、医療機関を限定して実施されています。

【先進医療Aとは?】
先進医療の中で、未承認、適応外の医薬品や医療機器ではなく、適応外の体外診断薬、検査薬などの使用する医療技術で、人体への影響が極めて小さいものです。

【先進医療Bとは?】
先進医療の中で、未承認、適応外の医薬品や医療機器を使用する医療技術で、安全性および有効性の評価が特に必要とされる治療法です。未承認の薬剤・治療法を含む場合もあります。

肺がんにおける先進医療の内容

2024年9月1日現在、【先進医療A】26種類と【先進医療B】50種類がおこなわれており、うち肺がんに関する先進医療は、計6種類がおこなわれています。

先進医療例(以下の表のほかにも行われている先進医療があります)

種類 治療法の名称 どんな治療法か 実施している医療機関数(全国)
先進医療A 陽子線治療
  • 放射線の一種である陽子線を照射する(根治可能な肺がんに限る)
20施設
重粒子線治療
  • 重粒子線(炭素イオン線)を照射する(根治可能な肺がんに限る)
7施設
細胞診検体を用いた遺伝子検査
  • 将来保険収載が期待されている種類も含め、分子標的薬の効果を予測できる遺伝子変異を同時に検索できる検査方法
3施設
先進医療B マルチプレックス遺伝子パネル検査
  • 進行期または再発期の非小細胞肺がんの患者さんに対して、初回治療時に多種類の遺伝子検査を一度におこなう
3施設

先進医療の費用について

基本的に保険診療と自費診療(自由診療)は併用することができませんが、先進医療AまたはBに指定された医療技術については、例外的に保険診療との併用(混合診療)が認められています(評価療養制度)。
先進医療にかかる検査や薬剤などの治療費は、通常全額自己負担(保険適用外)となりますが、その他の診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されます(混合診療)。

先進医療にかかる具体的な年間費用は、医療技術の種類や実施施設によって異なります。

【例】
陽子線治療・・・1件あたり、約333万円(公的医療保険費用を含む)
重粒子線治療・・・1件あたり、約329万円(公的医療保険費用を含む)
細胞診検体を用いた遺伝子検査・・・1件あたり、約49万円(公的医療保険費用を含む)

先進医療を受けるメリット・デメリット

先進医療のメリットとしては、患者さんの治療の選択肢が増えることが挙げられます。
デメリットとしては、保険適用外のため、標準的ながん治療に比べて高額となる場合があること、治療の有効性と安全性の情報が不十分であること、厚生労働大臣が指定した医療機関でしか実施が認められていないことが挙げられます。

参考:
・国立がん研究センターがん情報サービス
・厚生労働省「先進医療制度の概要」
・厚生労働省「先進医療の各技術の概要」2024年9月1日現在
・厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧」2024年9月1日現在
・厚生労働省「先進医療の概要について」
・厚生労働省「令和5年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 教授 笠原寿郎先生