分子標的療法
EGFR阻害剤の働く仕組み
EGFR阻害剤はEGFRから出る信号に作用
EGFR遺伝子変異が認められる患者さんでは、非小細胞肺がんの治療薬の1つで、EGFRを治療標的としたEGFR阻害剤(EGFRチロシンキナーゼ阻害剤:EGFR-TKI)というお薬の効果が期待できます。
EGFR阻害剤は、EGFRのチロシンキナーゼ部位を特異的に阻害して、EGFRから細胞内へ、がん細胞が増殖するための信号が伝わることを遮断することで、がんが大きくなるのを抑える、または、がんを小さくすると考えられています。
EGFR遺伝子変異が認められる非小細胞肺がんの患者さんでは、EGFRのチロシンキナーゼの働きが常時ONになっており、がん細胞増殖の信号を遮断するEGFR-TKIというお薬が効果を発揮しやすくなっています。 EGFR-TKIによる治療を受けるためには、がん細胞にEGFR遺伝子変異があることを確認する必要があり、性別、喫煙歴、がんの種類(腺がん・非腺がん)などの患者さんの背景にかかわらず、EGFR遺伝子変異検査を実施し、変異状況を明確にすることが求められます。
EGFR遺伝子変異が認められる非小細胞肺がんの患者さんにEGFR-TKIを投与した場合、がんが小さくなることが期待できます。ただし、 EGFR遺伝子変異が認められる患者さんでも、EGFR-TKIによる効果が得られないこともあります。また、いったん効果が得られても、がん細胞がEGFR-TKIに対して抵抗性を身につけてしまうため(獲得耐性)、次第に効果が減弱してしまいます。
EGFR遺伝子変異とがん細胞の増殖
がん細胞は自分自身が増殖することで大きくなり、病気を悪化させます。
がん細胞の表面にはEGFR(上皮成長因子受容体)と呼ばれるタンパク質ががん細胞を増やす働きをしています。
EGFR-TKIはがん細胞を直接攻撃するのではなく、EGFRの働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑える、または、がんを小さくすると考えられています。
監修:日本医科大学 呼吸器内科
臨床教授 笠原寿郎先生
2022年12月掲載