手術療法

開胸手術と胸腔鏡手術

開胸手術:身体のどこから切るの?

手術を勧められたときに、皮膚をどのように切るのか気にされる方が多いようです。
通常では背中側、肩甲骨の内側から肋骨に沿って斜め下、前の方向に切開します。
肋骨は切り取ってしまうのではなく、押し広げるようにします。

開胸手術:どこをどのように切るの?

胸腔鏡(内視鏡)手術とは?

肺がん手術には、古くから行われている外科手術的な開胸術と、胸腔鏡という内視鏡を使用する胸腔鏡手術があります。
開胸術は、肩甲骨の下から胸にかけて15〜20cmほど切開し、肋骨を広げて肺を切除します。
一方、胸腔鏡手術は、胸を数ヵ所小さく切開し、そこから小型電子カメラがついた胸腔鏡や鉗子、自動吻合機などの手術器具を挿入して肺を切除します。胸腔鏡手術には、モニターだけを見ながら手術する完全胸腔鏡下手術(VATS;バッツ)と、胸腔鏡を挿入してモニターを見つつ、直接目でも確認しながら肺切除を行う胸腔鏡補助下手術(Hybrid VATS;ハイブリッドバッツ)があります。

胸腔鏡(内視鏡)手術とは?

胸腔鏡手術は、切開する傷が小さいので開胸術に比べて美容的に優れているというメリットがあります。一方、デメリットは、手術中に出血が起きたときに処置が遅れる可能性があることです。手術時の出血量や術後合併症にかかる頻度、入院期間、術後の痛みなどについて従来の一般的な開胸手術と比べたところ、手術時間と出血量については胸腔鏡を用いた手術の方が優れており、再発率や5年生存率についても同等であるという報告もあることから、Ⅰ期(ステージ1)の非小細胞肺がんの手術方法として推奨されています。

肺がん手術の名医を探すコツ

肺がんの手術を受けることになったとき、誰でも手術の上手い“名医”に手術を行ってほしいと思うことでしょう。
“名医”が何を指すのかは、患者さんが手術に望むことによって違ってきます。手術の成功を望むのは当然として、その他に傷の大きさを重視する方もいれば、術後の入院日数や痛み、合併症の少なさを重視する方もいることでしょう。ご自分が手術にどのようなことを望むか考えた上で、かかりつけ医や主治医に、その望みに沿った手術をしてくれる医師がいるかどうか質問してみてはいかがでしょうか。あるいは、患者さん自身でまたはご家族を通して、手術を担当する医師に手術の経験や成績を尋ねてみてはいかがでしょうか。

日本はがん医療の均てん化(日本全国のどこでも標準的ながん治療を受けることができる)に力を入れており、専門的ながん医療を行える医師を各地に配置するようにしています。まずは身近なところから情報収集をしてみてはいかがでしょうか。

参考:
・日本肺癌学会編:肺癌診療ガイドライン2021年版,金原出版株式会社
・日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック2021年版,金原出版株式会社
・渡辺俊一ほか:国立がん研究センターの肺がんの本,2018,小学館

監修:日本医科大学 呼吸器内科
 臨床教授 笠原寿郎先生