肺がんの再発とその治療

肺がんが再発する仕組み

手術や放射線治療でがん細胞を取り除き、肉眼で見えなくなっていても、実際には確認できないほど小さく残っていたがん細胞が再び出現することを「再発」といいます。

再発と似たような言葉に「再燃」がありますが、再燃は治療をおこなったにもかかわらず、残ってしまったがん細胞が再び大きくなることです。

治療でがん細胞をすべて消滅させたと思っても、肉眼で見えないほどの大きさや、検査ではわからないぐらい小さながん細胞が残っていたり、血液やリンパ液の中にがん細胞が紛れ込んでいたりする可能性があります。小さく残っていたがん細胞が元の部位やその近く、あるいは血流やリンパ液の流れにのって最初に治療した部位から離れた場所で大きくなると、数ヵ月後や数年後に再発・転移として現れます。

再発は部位によって局所再発、領域再発、遠隔再発の3つに分けられます。
局所再発は、最初に治療した部位やその近くで再発することです。
領域再発は、最初に治療した部位と同じ組織や近くのリンパ節で再発することです。
遠隔再発は、最初に治療した部位から離れた部位で再発することで、遠隔転移ともいいます。

肺がんの再発は遠隔転移として起こりやすく、肺のほかの部位、縦隔、肺門部や鎖骨上のリンパ節、脳、骨、肝臓、副腎で転移がよくみられます。

転移の部位による主な症状は下記の表の通りです。

転移した部位 主な症状
ふらつき、けいれん、手足のまひ、頭痛
痛み、骨折
縦隔・肺門のリンパ節 上半身のむくみ、声がれ
脊椎 足のまひ、尿失禁
肺、気管、気管支 咳、血痰、息切れ、胸痛
肝臓 腹部のはり、痛み、黄疸
副腎 腰痛、倦怠感

肺がんが再発する時期は、手術や放射線治療でがん細胞をすべて取り除いてから3年以内が多く、5年を過ぎて起こることは多くありません。治療後5年を過ぎても再発がなければ完治と考えられるので、手術後5年間は定期的に病院へ通い、胸部X線検査やCT検査、血液検査、喀痰細胞診などをおこない、再発がないかどうかを調べます。

再発しやすい「小細胞肺がん」の再発予防

病期(ステージ)によっては、再発予防のために術後に抗がん剤治療(化学療法)や放射線治療をおこなうことがあります。

限局型小細胞肺がんの場合は、脳への転移・再発予防の目的で、脳全体に放射線を照射する「予防的全脳照射」がおこなわれています。

再発した肺がんの治療

手術後に再発した非小細胞肺がんの治療には、初回治療と同じく手術、放射線治療や薬物療法があります。再発している部位や数、遺伝子変異の有無や患者さん自身の体力など、さまざまな観点を考慮して治療が提案されます。放射線治療を受けた後、同じ部位に再発した場合は、放射線治療を重ねて受けることはできませんので、放射線治療以外の治療がおこなわれます。

小細胞肺がんが再発した場合は、抗がん剤を用いた治療が推奨されています。初回の治療から再発までの期間によって、使われる薬剤が異なります。また再発部位に対する放射線治療や、症状緩和を目的とした治療がおこなわれることもあります。
再発肺がんに対する治療についても近年研究が進み、再発したからといって余命が短いとは限らず、抗がん剤や症状を抑える緩和ケアを続けながら、これまでと同じ生活を続けることもできます。

再発した肺がんに対しては、がんを縮小する、または大きくならないようにさせて延命することと、症状をやわらげて生活の質を下げないようにすることを目的に治療が選択されます。患者さん自身の治療や生活についての希望を主治医とよく話し合って治療を選択しましょう。

監修:日本医科大学 呼吸器・腫瘍内科学分野
 教授 笠原寿郎先生