講演:(株)マツモトメソッド 代表取締役 松本和也氏(元NHKアナウンサー)
講演
(株)マツモトメソッド 代表取締役
松本和也氏(元NHKアナウンサー)

どうすれば主治医とうまく話せるの? ~伝える力を高めよう~

伝えるために、まず大切なのは事前の準備。頭の中を整理しましょう。

数年前のことですが、家族の手術の件で私が代表して医師と話すことになりました。みなさんも経験があると思いますが、医師と話すと言っても、診断の衝撃や難しい単語の羅列で、普通は誰でも頭が真っ白になってしまいます。そんな状況でも医師に対して、わからないことを質問したり説明してほしいと依頼したりできたのは、アナウンサーとしてさまざまな人から情報を引き出す訓練をしていたからだと思います。
うまく話すコツは、まず事前の準備が大切です。
ある内科医の「患者の主治医は患者自身。患者は自分に向き合って頭の中を整理することが大切」という言葉に感銘を受けました。その医師は、事前に患者さんに病気に関する手紙を書いてもらい、それを読んでから診察をするそうです。手紙は、医師にとっても大きな情報源になりますが、実は、患者さんが自分の状況を整理するための仕掛けなのです。
みなさんも、医師に伝えたいことをまず書き出してみてください。それだけで、コミュニケーションはずいぶん楽になるはずです。

言い方はおだやかに。内容はダイレクトに。

医師の前では緊張します。専門用語が多く、早口で声も小さく、説明はどんどん進みます。
そんなときの医師への声のかけ方の大原則は、「言い方はおだやかに。内容はダイレクトに」です。緊張すると早口になったり、きつい言い方になったりすることがあります。すると、医師の方も責められているように感じてしまい身構えてしまいます。いつもよりゆっくりと、そしておだやかに話しましょう。
内容はストレートに、「すみません。早すぎてついていけないです」「ちゃんと理解したいので、もう1回ゆっくり話してもらいませんか」と、言ってかまいません。
早口の先生を止められないと思うかもしれませんが、「ちょっとすみません」と、話の途中で言ってもよいのです。医師は、患者さんの理解しようする努力を歓迎してくれるはずです。

確認する、要約する、書いてもらう。

途中で、医師の話を自分でまとめたり整理したりするのも良い方法です。
「一旦、ここまでの話を整理して良いですか。つまり、○○ということですね」と確認すると、間違っていたら再度説明してもらえます。
または、「すみません。細かいことは難しいので、ざっくり要点だけ聞かせてください」
と言ってみるのも良い方法です。医師には説明責任があるので詳細な内容まで解説されますが、改めて大事なところだけまとめてもらうとわかりやすくなります。
それでもわからない場合には、「すみません。覚えきれないので、紙に書いてもらえませんか」「図か絵を使って説明してもらえますか」などとお願いするのもよい方法です。

聞きたいことは箇条書きに

質問したいことがたくさんある時、箇条書きにして渡してしまいましょう。
医師はあなたの質問をすべて見渡して、重要なところから説明してくれます。
「うまく言わなきゃ」とか「こんなことを聞いたらバカだと思われないだろうか」という気持ちは捨てましょう。
医師から過去の病歴や症状などを質問された時は、思いついたところから話すのではなく、焦らず、少し考えをまとめてから話しましょう。
「少し考えをまとめます」「思い出すので少し待ってください」など間つなぎの言葉も便利です。
一度にたくさんの情報を伝えるより、端的に短い答えを返し、その言葉に対して医師から次の質問があり、それに答えるといったキャッチボール形式の会話が成り立つと、なお良いです。

コミュニケーションの4つのコツ

まとめとして、コミュニケーションのコツを4つあげます。
1つめは、「話が通じないのは当たり前だと考える」。
お医者さんと患者さんとは、生きている世界が違います。常識も違います。通じないのが当たり前というところをスタートにしたら苛立つことも少ないです。
2つめは、「概要の把握に努める」。
要するに、ざっくりと理解するということです。薬の名前などを全て覚える必要はありません。まずは大枠を理解して、細かいことは後でまた聞けばいいのです。
3つめは、「おだやかに。ゆったりと。を意識する」。
話をするときは意識的にゆっくりと。こちらがゆっくりと話をすると、相手もそれに呼応して落ち着いて答えてくれます。
4つめは、「教えてください。と素直に相手を頼る」。
この姿勢を示せば大抵の人は教えようとしてくれます。
それでも、主治医にうまく伝えられない時は、自分で抱え込まずに看護師や支援センターの相談員さんに助けを求めましょう。

コミュニケーションの4つのコツ

最後にもう一度、「言いたいことはシンプルに、おだやかに」これがすべてのコミュニケーションの基本です。言いたいことが山ほどあっても、少しがまんして、重要なことから少しずつ、おだやかに。これを心がけていただけたらと思います。