患者・医療従事者 - 座談会 -

抗がん剤治療を行うにあたり、医療者から事前に受けた説明のおかげで、ある程度副作用を想定できていました

《司会》川上 祥子さん 川上:はじめに、患者さん代表としてご参加の森さん、清水さん、根本さんに、肺がんと診断された当初、「薬物治療」にどのようなイメージを持っていたかお聞かせいただきたいと思います。

森:私は、診断後すぐに抗がん剤治療を開始しました。がん治療についてまったく知識もイメージもないまま治療が始まったというかたちでした。

清水:ⅠB期(ステージ1B)だったので、診断後、まず、手術を受けました。しかし、その後副腎と脳に転移が見つかったため抗がん剤治療を始めました。森さんと同じで診断前には知識もイメージもなかったのですが、私の場合、肺がんと診断されてから抗がん剤治療を開始するまでに1年ほど期間があり勉強することができましたので、効果も副作用も予想通りという感じでした。

根本:私は2015年に非小細胞肺がんと多発性骨転移でⅣ期(ステージ4)と診断され、すぐに抗がん剤治療を開始しました。抗がん剤というと髪が全部抜けて、激しく嘔吐する怖いイメージを持っていましたが、私は最初から分子標的薬だったので「意外と楽だ」というのが実感でした。

川上:実際に、みなさんが向き合ってこられた副作用についても聞かせてください。

《司会》《患者》森 雅人さん 森:抗がん剤治療を始める前に主治医の先生、薬剤師さん、看護師さん、それぞれから説明を受けました。副作用の重い症状をたくさん聞かされたので、治療前は少しひるみました。ただ、最初の治療ではそれほど強い副作用は経験せず「たいしたことはないじゃないか」という印象でした。
しかし、次の治療では強い副作用を経験して「なるほど、先生たちが言っていたのはこれか」と感じましたね。

《司会》《患者》森 雅人さん

清水:副作用のことも妊よう性についても丁寧に説明してもらいました。私にとって妊よう性は重大な問題だったので、そこまで説明してもらえてよかったです。治療を始める前に精子を凍結保存し、その後、子どもを授かることもできました。
副作用は事前説明で想像した範囲内でしたが、回を重ねるごとに重くなり、ファーストラインの4回目はかなりつらかったです。吐き気や倦怠感も強く、当時、仕事をしていたのですが、症状がピークになる3~4日は外出することができない時期もありました。

根本:抗がん剤治療を開始した当初の症状は下痢でした。1日に何度も水様便が出るので外出ができず、部屋に引きこもるような状態でした。続いて、顔や首回りに皮疹が出て、さらに外に出られない状態になりました。今は、症状は落ち着いています。

多くの副作用は、明確な治療目的や目標があってこそ乗り越えることができるものです

川上:瀬戸先生に伺いたいのですが、肺がん治療を進めていくうえで、治療の効果と副作用について患者さんとどのようなお話をされますか。

瀬戸:患者さんにお話しするときに心がけているのは、治療目的を明確にすることです。治癒をめざすのか、生活の質を上げるのか。目的が違えば選択する治療方法も異なります。期待される効果と予測される副作用も考えて、さらには遺伝子の型なども調べて目的に適した治療法を選ぶ。それが標準的な治療の考え方だということも伝えます。

川上:効果と副作用、どちらも伝えるのですね。

瀬戸:私は、どちらかというと副作用よりも効果の説明に力を入れています。医療者は最悪のケースを想定して副作用の説明をしがちですが、それでは患者さんの気持ちを暗くしてしまいます。医師は治療の先導役だと思っているので、前向きに、リスクを乗り越えて得られる効果が大事なのだとお伝えしています。副作用の詳細についての説明は薬剤師さんと看護師さんに任せています。

《薬剤師》牧原 玲子先生 牧原:私たち薬剤師が患者さんに接するのは治療法が決まった後ですが、患者さんが医師の説明を十分に理解できていない場合も多いので、不明点を埋める役割を担います。先生のお話をどのように理解したかを確認したうえで、副作用の説明をするようにしています。瀬戸先生のおっしゃるとおり、目的を理解しなければ自分なりに副作用を理解してつきあうことができなくなりますので。副作用については、症状の説明だけではなく、たとえば最初は副作用を感じなくても治療の回数を重ねてから出る可能性があることや、副作用によって生活にどのような支障が出るかなどを具体的にお話しするようにしています。

《薬剤師》牧原 玲子先生

坂本:看護師の重要な役割のひとつに、家族背景を聞いて支援者がいるかどうかの確認があります。支援者がおらず自宅での生活が難しい場合は、ソーシャルワーカーと一緒に地域の福祉サービスの利用を考えます。また、支援者がいてもいなくてもセルフケアは重要ですので、継続的な指導も行っています。

川上:薬剤師さん、看護師さんのサポートはとても頼もしいものですが、外来化学療法だと接点が少ないように思うのですが、実際にはどうでしたか。

森:私が治療を始めたころは、薬剤師さんに相談できるような機会はなかったですね。看護師さんについては、入院期間が長かったので、顔と名前を覚えてくれて親身に相談にのってもらえましたが、外来だったら接点はなかっただろうと思います。

坂本:抗がん剤が点滴薬の場合は外来化学療法室の看護師と接点を持てますが、最近は内服薬も増えて、主治医以外とは話をせずに帰られる患者さんも多いですね。副作用について相談ができているのか心配しています。がん相談支援センターや、がん看護外来に来てもらえると嬉しいのですが。

瀬戸:私は外来診察の前に、点滴薬の患者さんは看護師さんに、内服薬の患者さんは薬剤師さんに副作用などを確認してもらって、その情報を診察に生かすようにしています。今はほとんどの病院に多職種連携のシステムがありますし、看護師さんや薬剤師さんに相談できる窓口があると思います。患者さんには自分から積極的に利用して欲しいですね。