患者・医療従事者 - 座談会 -

副作用と向き合ったとき、医療者に相談できたり適切な指導があったりすると落ち着いて対応できます

川上:治療の中で、一番つらかった副作用について聞かせてください。

森:ファーストラインは楽だったのですが、セカンドライン、サードラインの副作用は本当に厳しかったです。食べられない、食べると吐く。吐き気は前触れなくいきなり来るので、外出できなくなりました。週に一度の診察で病院に行ったときに、待合室での急な吐き気と痛みで意識を失い、その病院の救急に担ぎ込まれる結果になりました。

川上:つらかったですね。どのように乗り越えたのですか。

森:そのまま耐えるしかありません。アイスクリームとチーズだけは食べられたので、それでぎりぎり栄養をとっていた感じでした。

《患者》清水 公一さん 清水:私の場合も回を重ねるごとにひどくなりました。吐き気や食欲不振に加えて精神的に落ち着かないという症状もあり、じっと座っていられず、家の中を徘徊していました。先生に相談するとそれを抑える薬を処方してもらえましたが、これらの症状について看護師さんや薬剤師さんに早く相談できたらよかったのにと思います。

《患者》清水 公一さん

瀬戸:それは、抗がん剤の副作用を抑えるために使うステロイドの影響かもしれません。ステロイドを使わないことによるメリットとデメリットを比べたうえで、対処薬で一時的にしのいで欲しいと考えたのではないかと思います。頻繁に出る症状ではないので、私もあらかじめ説明することはありません。
主治医との対話の中で、副作用症状の原因を探り、説明してもらえると不安とも向き合いやすくなりますよね。しかし、このようなお話は医師より薬剤師さんの方が上手です。

清水:当時、抗がん剤の副作用だと思い、その治療に不安を感じていたので、今のような説明があったらよかったのにと思います。しかし、通院して抗がん剤の点滴をしていたので、薬剤師さんや看護師さんと話すチャンスはありませんでした。

牧原:患者さんからそのような訴えがあった場合、薬剤師は最初に投薬スケジュールと症状が出たタイミングを整理して、その症状が副作用なのか病気の症状なのか、他の要因があるのかを確かめます。「犯人捜し」をする感覚で、患者さんと一緒に状況を整理しながら考えていったときに、数日の副作用であると理解したところで、患者さんご自身が「数日間なら我慢しよう」あるいは「つらいので薬を変えられないか先生に相談しよう」という答えを出されることも多いですね。今は通院しながら抗がん剤治療を行うことが多いので、患者さんご自身で体調変化を記録してもらえると助かります。
また、みなさん同じような症状で悩んでいることや、先輩患者さんが副作用を乗り切るために工夫していたことを伝えると「私も頑張ろう」と納得される方も多いです。

川上:先輩患者さんの経験と知恵を伝えていくことも薬剤師さんの役目ということですね。根本さんはつらい経験があったようですが。

《患者》根本 妙子さん 根本:服用を始めて1週間ほどで出た皮疹は、その後しばらくして落ち着いたのですが、2ヵ月ほどしてから頭皮に湿疹ができました。清潔にしなければいけないのですが、洗うどころか髪が風で少し動くだけでも痛くて、頭を枕に置いても痛いので眠ることもできず、ソファに座って寝る日々が3ヵ月ほど続き体力も落ちました。
主治医に相談すると皮膚科を紹介されて、皮膚科では「清潔にして抗生物質を塗ってください」と外用薬をもらいました。睡眠がとれないのがつらくて、こちらからお願いして1ヵ月ほど休薬し、その後、減量して再開となりました。

《患者》根本 妙子さん

瀬戸:入院して看護師さんや医療スタッフの力を借りてもよかったかもしれませんね。

坂本:当院でも、通院患者さんから「枕に膿がつく」という話を聞いて、地肌に優しいシャンプーの紹介、洗髪方法の提案を行いました。
1日おきに内服に変更になり、症状は少しづつ改善しました。

清水:私は外来化学療法で看護師さんや薬剤師さんと話す機会はまったくなかったのですが、根本さんはありますか?

根本:私は骨転移の治療で外来点滴治療もしていたので、処置室の看護師さんとわずかな接点はありました。抗がん剤は内服薬なので、それだけだと接点はありませんね。

治療効果を期待すると、副作用が出たからといって簡単に治療を中止したくはないものです

川上:強い副作用を経験したときには、治療中止を考えたりしませんでしたか?

森:私はサードラインのときに強い副作用を経験しました。「これが効かなかったら、他の治療法も結果は同じだと予想されるので、積極治療は終了することを考えよう」と言われていたので、これで終わりなのだな、という思いがありました。
ちょうどそのとき、免疫チェックポイント阻害剤が肺がんに適応となり使用することになりました。副作用が少ないと言われている薬ですが、私の場合は中止を考慮する程度の副作用が出ました。でも、腫瘍が縮小しているのが確認できたので、生きたいという気持ちが強く、治療を止めることはまったく考えませんでした。副作用の関節炎を診てもらった整形外科の先生に「あなたの命をつなぐためのお薬です。痛みは私がなんとかするから!」と言われたのも励みになりました。

川上:副作用が出ても、治療を続けられるなら続けたいですよね。

森: 結局、大腸炎がひどくなって、主治医から治療中止の判断が下り、太い静脈から栄養剤を投与するため、2ヵ月以上入院することになりました。その後、主治医から投与間隔を延ばして治療を再開してみようと提案を受けて、今に至っています。

瀬戸:投与間隔を長くしたのは良い選択だったと思いますね。病状がコントロールできていたわけですから、効果と副作用のバランスを考えるのは重要です。主治医と患者さんが、治療目的を共有できていたからこその選択だと思います。

川上:森さんと清水さんは共通して珍しい副作用症状を経験したそうですね。

清水:そうなんです。聞いたことがない症状なので、抗がん剤とは無関係なのかなと思いつつ患者会で話題にしたら、森さんから「私も」と言われたのです。そこで、主治医に相談したのですが、製薬会社に確認してもらっても報告例がないという話でした。でも、そのお薬を使わなくなったら症状も治まったので、やはり副作用だったのではと思います。

瀬戸:免疫チェックポイント阻害剤のように使用経験が少なく、発売されてからの期間が短いお薬では、まだ報告がない副作用がたくさんあります。呼吸器科の医師は肺炎などの呼吸器系の副作用には敏感ですが、他の臓器の変調には気づきにくいのが実際のところです。新薬の使用患者数が増えると、経験していなかった副作用が報告されてくる可能性があるので、医療者に相談することが大切です。