3.治療変更と価値観の変化〜医療従事者からのメッセージ

再発・転移したとき、どう感じるか、どう行動するか
「治療をあきらめたくありませんでした。できることをやり、納得したかったんです」

川上:一次治療の効果がみられなくなってきたと先生から伝えられたときのお気持ちと、そのときにどうしたかを教えてください。

小倉正一:私の場合、一次治療中に頭痛がでてきて、それが長引いたのでMRIを撮ったんですね。その結果、脳への転移がみつかり、髄膜炎も併発していました。実は、転移がみつかる前から、お薬がいつか効かなくなるかもしれないということは知っており、そうなった場合のことを主治医の先生と話し合っていました。そこで次のステップとして、次に有効と思われるお薬を探すために髄液検査や遺伝子検査を行いましたが、それだけではわからなかったので気管支鏡検査も行うことにしました。次の治療法が見つかる可能性があるならやりたいと思い、自分から先生に検査をして欲しいとお願いしました。私は治療をあきらめたくなかったんです。

長谷川:そのときは、脳への放射線治療をするかどうかとか、どの治療から先にした方がいいかなど、相談を受けた記憶があります。

小倉正一:はい。とても悩んでいたので。脳転移がみつかったときは、セカンドオピニオンを4回も受けました。1回目は家内と行きましたが、それだけでは不安だったので、一人で他の病院に3回行きました。その結果を総合的に考えた結果、主治医の先生が示した治療法で間違いないと納得でき、次に進むことができました。やっぱり、納得いくまで確かめたかったんですね。

川上:がん情報サイト「オンコロ」では、進行・再発非小細胞肺がん患者への組織採取や遺伝子検査に関する意識調査を実施しました。金田先生は、確定診断時以外での気管支鏡検査も重要だとお考えですか。

金田:はい、そう思います。医師としても、患者さんは納得して次の治療に進んでいただくことが必要なので、必要な検査があれば勧めます。ただ、病院によっては実施していない検査があるかもしれないので、医師が勧めるのを待つのではなく、小倉さんのように患者さんからリクエストする必要があるかもしれません。

肺がん診断前と今、人生における価値観の変化

川上:肺がんと診断される前と今、人生において大切にするものや価値観に変化はありましたか。

小倉正一:肺がんと診断される前は、仕事が第一だったのですが、診断された後は、家族と過ごす時間が多くなりました。時間配分の意識が変わりましたね。

小倉越子:私は、家の中を充実させようと思って、一番長く過ごす場所である家を快適にする楽しさに目覚めました。例えば、カーテンをすべて取り替えてみたり、断捨離してすっきりさせたりですね。時間をいかに有効に使うかを考えるようになりましたね。

長谷川:僕は価値観が変わったとはあまり思わないのですが、今の生活を楽しむことを考えるようになりました。肺がんと診断されてからできなくなることが少なくはなかったですが、その中でも何かできることで、大切なことが見えてくるような感覚があり、おそらくそれを充実という言葉に変えられるのかもしれないなと思います。

医療従事者から患者さんたちへのメッセージ
「患者さんと医療従事者は運命共同体です」

川上:では、これまでのお話を受けて、患者さんとそのご家族へのメッセージを聞かせてください。

春藤:患者さんは何かしらのメリットを得るために治療を受けておられるはずですよね。そのメリットを最大限に得るために、ぜひ病院のサポート体制をフルに活用していただきたいと思います。また、私たち医療者も、患者さんが今どんな気持ちでいるのかをくみ取って、その気持ちに寄り添った看護ができればいいなと感じています。患者さんには、患者会などへ自分から情報をもらいに行ったり、勇気をもって医師に意見を聞いたりするなど、積極的によりよい治療を求めて欲しいです。

《医者》金田 裕靖先生 金田:今日のテーマのひとつでもある「納得できる治療」についてずっと考えていました。よい薬というのは、どんどん世に出てきます。その薬を使って有効性のある治療をするということはもちろん重要ですが、加えて、医療者と患者さんが同じ方向を向いて治療していくことも重要なのではないでしょうか。大事なことは、患者さんが納得できる治療をすることです。そのためには、患者さんも自分から一歩前に出て、情報を得ようという意識をもってもらえるといいと思います。
患者さんの治療がうまくいっているときは、医療者もうれしいし、治療がうまくいっていないときは、医療者もつらいと感じています。そういう意味で、医師と患者は運命共同体です。状況によって、診療時間は長かったり、短かったりしますが、大切なことは治療自体が上手くいっているかどうかで、その点を最も気にかけているのは医師も患者さんも同じだということを知っていただけるとうれしいです。

《医者》金田 裕靖先生

川上:みなさま、本日は貴重なお話をありがとうございました。