野澤 桂子先生 (臨床心理士)

がん治療は、この先も「生きる」ための手段です
治療のときだけ“パートタイマー患者”でいてください

がんと診断され治療することは、体にも心にも大きな負担となります。でも、治療は、この先の人生を歩んでいくための手段の一つに過ぎませんし、あなたの人生すべてが病気になったわけでもありません。

確かに、我慢をしたり、予定をキャンセルしたりとマイナスのことが多いですが、ときには、がん治療中であることを告知して、社会の支援やサポートを享受し、活動的に過ごしてもらいたいと思います。
もちろん、病気のことはプライバシーですから、基本、人に伝える必要はありません。でも、伝えることで仕事や人間関係などであなたに利益が得られる場合、口実に使うのは構いません。また、新幹線や飛行機など公共交通機関でも多目的室の利用や車椅子のサポートを受け入れてもらえますし、テーマパークでもサポートの必要な方向けの優先サービスが用意されていることがあります。ときには、こうしたサポートを利用して、ご家族や友人と楽しく1日を過ごしていただきたいです。
当院に通院中の患者さんの中には、抗がん剤治療の3クール目が終了したその足で、羽田空港へ向かい、そこからアメリカ西海岸へ渡り、休みながら仕事もし、体調の良い3週目にはアメリカのパワースポットも巡って帰国し、4クール目を開始したという方もおられます。化学療法のスケジュールとその後の体調変化について正しい情報を事前に入手し、治療も新しい生活スケジュールに組み込んでしまったからこそできたことだと思います。

治療や症状にもよりますが、案外、できることはたくさんあることを知っていただきたいと思います。
私たちアピアランスケアに関わる医療者は、患者さんの結婚式・成人式・入学式などライフイベントへの参加も積極的に支援しています。人間は人のために生きて初めて生きがいを感じる社会的な動物です。ライフイベントを準備していくプロセスは、患者さんにとってもご家族にとっても、家族や社会の中での自分の役割や生きていることを実感できるいい機会になります。
少なくとも外見のことで、好きなこともできない、家にこもりきりということがないよう、「治療のときだけパートタイマー患者」でこれまでどおり人生を楽しんでいただきたいと思います。