玉木 彰 先生

「治療開始前(入院前)」、「治療中(入院中、周術期、化学療法期など)」、「治療後(退院後)の日常生活」の3期に分けて、必要なリハビリテーションをおこないます。呼吸リハビリテーションで最も重要とされるのは、活動するための基礎体力づくりです。呼吸機能を重点的に鍛えることより、日常活動がスムーズにおこなえる体力と筋力をつけることで、自然な呼吸機能の回復を図ります。

手術など外科的な治療を受ける場合の呼吸リハビリテーションについて教えてください。

まず、手術後に起こる体の変化を理解しましょう。肺を切除するため、肺活量が少し減ります。また手術によって胸に傷ができると手が上がりにくくなるかもしれません。さらに、傷の痛みによって痰を吐き出す動作が一時的に難しくなるかもしれません。

手術前には、これらの変化を想定した呼吸リハビリテーションをおこないます。たとえば、可能な限り活動して体力を向上させる、深呼吸をして息を吸い込む力をつける、手を上げて胸を広げる練習をする、痰を吐き出す練習をするなどのメニューが効果的です。

玉木 彰 先生

手術後は、医師や理学療法士から、可能な限り早くベッドから起き、立って歩くように指示があると思います。

体を起こすと、重力によって肺が広がりやすくなり、換気(空気の出し入れ)が楽になります。血圧など循環機能の改善にもつながります。

その後、日常生活に戻るために、少しずつ運動など負荷をかけた呼吸リハビリテーションに移行します。並行して、肺活量を回復させるために、深呼吸や器具を使った呼吸練習をおこなうこともあります。

化学療法を受ける場合の呼吸リハビリテーションについて教えてください。

食事がとりにくくなる、だるさがあったり気分が悪くなるなど、治療中、治療後の副作用や合併症を想定して治療前から呼吸リハビリテーションを開始します。まずは、できるだけ基礎体力を上げておくことが大切です。

化学療法中も無理のない程度に、気分転換を兼ねてストレッチなど軽い運動を取り入れるようにすると、血液循環が改善し、食事がとれたり、だるさや気分の悪さなどが軽減されたりすることもあります。

日常生活でおこなうリハビリテーションとは、どのようなことをおこなえば良いですか?

最も大切なことは、日常生活の中でできるだけ動くということです。医療者の指導の下、決められた時間だけリハビリテーションをおこなうのではなく、日々の生活の中で積極的に活動することを第一目標としてください。

まず、お勧めしたいのは、歩くことです。目標値を設定して、万歩計で歩数を記録してみてください。

次のステップとして、たとえば、ゆっくり歩いたのか、力強く大股で歩いたのかなど運動の強さにも注目してみましょう。また、呼吸機能を意識してリハビリテーションをおこなうのであれば、深呼吸が勧められます。

適切な呼吸リハビリテーションの強さについて教えてください。

適切な運動強度は、ご自身の感覚が重要になります。負荷の強さを評価するツール[修正Borg(ボルグ)スケール]を活用してみましょう。特に何も感じない楽な状態を0、とても強くてつらい状態を10としたとき、3~4程度の強さを目標として呼吸リハビリテーションをおこなうのが良いとされています。

修正Borg(ボルグ)スケール

0 感じない(nothing at all)
0.5 非常に弱い(very very weak)
1 やや弱い(very weak)
2 弱い(weak)
3
4 多少強い(some what strong)
5 強い(strong)
6
7 とても強い(very strong)
8
9
10 非常に強い(very very strong)

Borg, G. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377-81

心拍数の測定など厳密な規定値を作るよりも、頑張りすぎない・無理をしない程度の活動を継続することのほうが大切だと考えています。

一方で、どうしても無理をしすぎてしまう方もいらっしゃると思います。頑張りすぎてかえって体調を崩すことのないよう、ご自身の性格やくせに合わせて呼吸リハビリテーションを取り入れていくようにします。

Borg, G. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377-81

ストレッチ運動は必ずおこなったほうが良いでしょうか?

ストレッチ運動は座った状態や横になった状態でもできるため、積極的に取り入れてもらいたい運動の一つです。リハビリテーションなど運動や活動の前後にストレッチ運動をおこなうことで、ケガを予防して、疲れを残さないという利点があります。

①準備運動(ウォーミングアップ)→②目的とする運動→③整理運動(クーリングダウン)というように取り入れましょう。

①準備運動(ウォーミングアップ):5~10分

①準備運動(ウォーミングアップ):5~10分

②目的とする運動:20~30分

②目的とする運動:20~30分

③整理運動(クーリングダウン):5~10分

③整理運動(クーリングダウン):5~10分

兵庫医療大学リハビリテーション学部 理学療法学科 学科長・教授 博士(医学)専門理学療法士(内部障害)・認定理学療法士(呼吸)・臨床工学技士・呼吸療法認定士・呼吸ケア指導士

(学歴)
京都大学医療技術短期大学部 理学療法学科(現 京都大学医学部人間健康科学科)卒業
大阪教育大学大学院健康科学専攻 修士課程 修了
兵庫医科大学大学院医学研究科生理学専攻 博士課程 修了

(職歴)
星ヶ丘厚生年金病院(現 星ヶ丘医療センター)リハビリテーション部 理学療法士 大阪府立大学 助手
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 准教授
を経て現在に至る。

玉木 彰 先生

玉木 彰 先生
兵庫医療大学
リハビリテーション学部
理学療法学科
学科長・教授