大野 智 先生

監修:大野 智 先生
島根大学医学部附属病院臨床研究センター 教授。1998年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品にも詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成などにも取り組む。

第1回では、情報を見極めるための方法や、一見すると効果があるように惑わされてしまう情報の見せ方のトリックなどを紹介しました。情報を見極めると、その正確な情報に基づいて最適な選択ができると思えますが、いざ選択しようとすると難しいものです。第2回では、ほしい情報を見つけるときの注意点や、情報を正確に納得いくまで理解するためのコツやポイントなどをお伝えします。

「ほしい情報」は「正確な情報」?

「ほしい情報」は「正確な情報」?

ポイント:
ほしい情報が正確な情報とは限らない

がんと診断されてから、患者さんもその家族もインターネットや書籍・雑誌などから、「より自分に合った治療はどれか?」「もっと効果の高い治療があるのではないか?」とさまざまな情報を探すのではないでしょうか。また、治療中においても、心の中は不安でいっぱいになり、少しでも安心できる情報を探し続けている人もいるかもしれません。そんなとき、少し立ち止まってみてください。その情報を見直してみようで説明したように、「脳はだまされやすい」という特性があります。不安を感じている心に忍び寄る、一見すると優しくみえる言葉や100%の治療効果をうたう言葉など、知らず知らずのうちに不正確な情報を信じてしまっているかもしれません。頭ではわかっていても、安心感を得るために信頼性が乏しい情報を選んでしまう可能性すらあります。

それらの情報を見極める目を患者さん自身が養うことはもちろんですが、おすすめしたいのは医療従事者に相談して一緒に情報を吟味してみるということです。日本人のヘルスリテラシー(健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用するための能力)はEU 8カ国(オーストリア、ブルガリア、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、オランダ、ポーランド、スペイン)、またアジア 6カ国(台湾、マレーシア、カザフスタン、インドネシア、ミャンマー、ベトナム)と比べても全体的に低いことが報告されています1,2)

EUとの比較で特に差が大きかった項目は、病気になったときに専門家(医師、薬剤師、心理士など)の相談先を見つけることができるか、という質問です。日本では63.4%が難しいと回答している一方で、EUでは11.9%でした。EUでは家庭医制度が普及しており、身近な家庭医が病気の予防などの健康教育も担っていることが関係していると考えられています1)。日本では、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師をもちましょう、と声が上がり始めたところですから、専門家に直接相談する機会が少ないのかもしれません。

相談したいことがあっても、どこに相談したらよいか知らなかったり、どのように相談したらよいのかわからずとまどったりして、情報を十分に理解できずにうやむやのままになってしまっているようなことはないでしょうか。インターネットや書籍・雑誌の情報だけに限らず、医療従事者からの説明自体も腑に落ちるまで理解するにはなかなか難しいと感じている人もいるかもしれません。さまざまな情報をうまく味方につけるためにも、ヘルスリテラシーの向上について一緒に考えてみましょう。

ヘルスリテラシー向上のために

情報を見極める目を養う(第1回)

情報に疑問点があれば適切な専門家に相談できるようになる(第2回)

意思決定を行う(近日公開)

※1 Nakayama K. et al. BMC Public Health. 2015 May 23;15:505

参考

  1. 1) 
    Nakayama K, et al. BMC Public Health. 2015;15:505
  2. 2) 
    Duong TV, et al. J Epidemiol. 2017;27(2):80-6.

主治医やスタッフなど専門家は身近な相談相手

主治医やスタッフなど専門家は身近な相談相手

ポイント:
知りたいこと、聞きたいことをメモにして渡す

普段なじみのない医学・医療の情報を正確に見極めることや腑に落ちるまで理解することは簡単ではありません。主治医からの診断や治療に関する説明についてわからないことがあった場合には、まずは説明してくれた主治医に直接質問することが重要です。もちろん患者さん自身がわからなかったことをインターネットや書籍・雑誌などで調べることも大切ですが、患者さんの病状に一番詳しい主治医に相談することがとても大切です。

いま医療の現場では、治療を開始する前にあらかじめ効果や副作用などを患者さんに十分に説明し、患者さんは疑問があれば解消して納得、同意して治療を受けることになっています。これはインフォームドコンセントという、すべての医療行為において必要な手続きです。がん治療では、例えば「Aの薬を使うと5年生存率が○%上がります、生存期間が○カ月延びます。副作用は✕✕があります」などの説明です。ただし、患者さんやそのご家族は、説明を聞いても、説明書を渡されても、どう捉えてよいのかわからないことがあるかもしれません。

そういったときは「説明された○○のことがよくわかりません」「どの治療がよいかわからなくて、悩んでいます」「病気の進行や治療の副作用など、何だかとても不安です」と勇気をもって主治医に伝えてみましょう。説明でわかりにくかったことや質問したいこと、さらに治療に限らず日常生活における不安や悩みなども伝えることで、より詳しい説明をしてもらったり生活上のアドバイスをしてもらったりできます。

患者さんの中には、「質問すると、うるさい患者だと嫌われるのでは」「説明がわからないというのは失礼と思われないか」「次の患者が待っているので、自分ばかりに診察時間をとられると申し訳ない」とためらう人や、「いざ話そうとすると、何をどう話したらよいかわからなくなって、頭の中がまっ白になった」「質問したけれど、大事なことを聞き忘れた」という人がいるかもしれません。

そこで、おすすめしたい方法があります。それは、質問したいことをあらかじめメモしておき、診察時に主治医に渡すということです。主治医が回答を書ける大きさの紙に、質問を3つ程度にしぼって書いたメモを準備します。口頭で説明を聞くだけでは聞き間違いや聞きもらしが起こりがちですが、主治医がメモに回答を書いてくれれば、あとからでも落ち着いて読めるので「あの説明はこういうことだったのか」と理解もでき納得しやすくなるでしょう。

  • 相談したい内容をメモしておきます。

    • メモは、主治医が回答を書き込むスペースもとれるぐらいの大きさにします。
    • 質問の内容は、3つ程度までにしぼります。
      何十個も質問を書いてしまうと、主治医も対応に時間がかかりますので、いま気になることを書き出して、順位づけし、そのときに一番聞きたい質問を選びます。
    相談したい内容をメモしておきます。

    <メモの文例>

    • 病院から自宅に帰ってから、もらった治療の説明書を読んでも、△△がよくわかりませんでした。もう一度説明していただけますか。
    • インターネットで紹介されていた健康食品の○○を飲んでみたいのですが、どう考えられますか。
    • 一人暮らしなので入院で治療をした方がよいとのことですが、やはり自宅が落ち着くしペットがいるので、通院治療にしたいと思います。可能でしょうか。
  • 診察のときにメモを医師に渡します。

    診察のときにメモを医師に渡します。
  • もし医師に説明する余裕がないときは、次回に回答してもらいます。

    もし医師に説明する余裕がないときは、次回に回答してもらいます。

患者力アップで納得のいく治療を目指す

患者力アップで納得のいく治療を目指す

ポイント:
患者力アップの最初の一歩は「質問力」

患者さん一人ひとりに十分な時間をとって話をしたくても、残念ながら多くの医師が時間の余裕がなく忙しくしているのが現状です。待合室に何人もの患者さんが待っていてゆっくり話す時間がない場合、患者さんがあらかじめ準備しておいたメモを渡すのであれば、医師は時間に余裕のあるときに対応できるので助かりますし、質問の要点が要領よく伝わります。このように上手に相談するコツも、よりよい治療を受けるための大切な患者力の一つです。

患者力というと、自ら病気のことを勉強して治療方針も自ら決めていく力と思われがちですが、主治医に質問して自分の思いを伝えることも患者力として重要であり、ひいてはヘルスリテラシー向上の第一歩につながります。

病院には医師だけでなく看護師や薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、医療の専門家がそろっています。主治医以外にも、場合によっては専門家を紹介してもらって相談することも検討してみましょう。

また、患者さんやその家族を含め、人は誰しも、情報の内容そのものは頭でわかっていても、悩んだり迷ったりすることがあります。そのようなときに、一人で抱え込まずに、主治医をはじめとした医療の専門家に疑問点を質問し自分の思いを伝えることが大切です。

相談できる内容 相談先の職種
治療のことや日常生活の過ごし方も含めて、幅広く相談
※内容によって、どの職種に相談したらよいかも教えてもらえます
看護師
服薬のタイミング、副作用(症状、対処法など)、現在処方されている薬とほかの薬(健康食品・サプリメントなどを含む)との飲み合わせなど治療薬に関すること 薬剤師
普段の食事メニューや調理方法、栄養補助食品など 栄養士
不快な症状や痛みなど身体的な症状、不眠、不安や落ち込みなど精神的な症状など 緩和ケアチーム(医師、看護師、薬剤師、臨床心理士など)
体力の維持・向上、QOL改善のための運動など 理学療法士
医療費、介護保険、在宅医療、医療制度、就業に関することなど 医療ソーシャルワーカー

●相談先

主治医にはなかなか相談しづらいという方は、下記のような窓口を利用することもできます。

がん相談支援センター

全国のがん診療拠点病院、小児がん拠点病院、地域がん診療病院に設けられた相談窓口です。その病院に通院していなくても、どなたでも無料でどんなことでも相談できます。相談は、面談、電話、電子メールなど、いくつかの方法で受け付けていて、匿名で受けることもできます。

お住いの地域にあるがん相談支援センターは、国立がん研究センターが運営している「がん情報サービス」から検索できます。

がん相談支援センターを探す

がん相談ホットライン

治療や副作用のこと、お金や仕事のこと、毎日の暮らしのこと、人間関係のこと、がんとの向き合い方やこれからどう生きていくかなど、さまざまな悩みや心配事を伺い、どうすればよいのかを一緒に考えます。

看護師、社会福祉士など国家資格をもつ経験豊かな相談員が相談を受けています。

https://www.jcancer.jp/consultion_and_support/

がんピアサポート

がん経験者が、がん患者さんやご家族の悩みや不安、治療の疑問などを一緒に考えてサポートする「ピアサポート」という活動も相談先の一つです。

ピアサポートは、患者会やがん患者サロンなどで行われています。お住まいのお近くの患者会や患者サロンは、がん相談支援センターに問い合わせると教えてくれます。

なお、肺がんの患者会は本サイトにもリンクがあります。併せてご利用ください。

「肺がんとともに生きる ようこそ患者会へ」

https://www.haigan-tomoni.jp/meetup/search/