ゆったり歩きながら、史跡や自然などを学び楽しむ「ガイドウォーク」を公園でも。1回目となる今回は、<解説編>として、植物に着目して公園ガイドウォークのガイドを行っている東京農工大学名誉教授の福嶋司先生に、公園歩きの楽しみ方を伺いました。

ゆるっと公園ガイド Vol.1<解説編>

テーマを持つと、公園の多面的な魅力が見えてくる

何となくブラブラ歩きまわり、季節の花を愛でるなどしても、公園は十分楽しめるでしょう。でもせっかく行くのなら、何かテーマを持って訪れると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。

公園にはそれぞれに紡いできた歴史があり、個性があります。特に、古くからある公園は名木古木や史跡などの見所が多く、それらにテーマを設定すると、見慣れたはずの公園の違う顔が見えてきます。例えば、木々の歴史に目を向ければ、大陸の移動や気候変動の中でどんな変化を経て今ここに森があるのかに思いを馳せることができます。または、目の前の木が、いつ、誰によって、何のために植えられたのかを知れば、その木に親しみを感じられるかもしれません。公園の史跡について調べると、そこで起きた史実や縁のある人物について知ることもできます。

そうした情報は、ちょっとテレビで見たり、本を読んだり、そんなきっかけでいいんです。見終わった後は忘れてしまっても構わない。ちょっとした視点や示唆を得ることで、今見えている公園の姿はもちろん、時代ごとに何重にも積み重なった公園の姿を想像しながら公園散策ができるというわけです。

福嶋司先生

監修:福嶋司先生
東京農工大学名誉教授。理学博士。植生管理学を専門とし、公園や森のガイドウォークを行っている。著書に「カラー版 東京の森を歩く」(講談社現代新書)「日本のすごい森を歩こう」(二見レインボー文庫)など。

木と木、木と人の関係に目を向けると、面白いテーマが見えてくる

私は大学で植生管理学を専門にしていたので、公園に行くとやはり、どんな植物がどんな成り立ちで生えているかなどが気になります。そう聞くと、「名前を知らないと、植物を見ても面白くないのでは?」と思われる方もいらっしゃいますね。でも、名前など知らなくても、ちょっと見方を意識するだけで、さまざまな楽しみ方ができるんです。

例えば、植物同士の関係性について考えてみましょう。
「日本にある自然の森林は4層の植物からできている」という知識をもっていれば、1本の木ではなく、植物同士の関係性などにも思いがめぐることでしょう。最も高い「高木層」には何があるのかを見れば、その場の気候が想像できますし、人の手が入った森は層が少なく、「亜高木層」「低木層」がなくてすぐに「草本層」なので、人工林と自然林を見分けながら歩く、といったこともできるかもしれません。

日本の代表的な森の4層構造の例

日本の代表的な森の4層構造の例

また、 “木を植えた人”を調べてみても面白いですよ。例えば、浜離宮(東京都中央区)のトウカエデは、徳川吉宗の時代に中国・清王朝から贈られたもので、6本のうち5本が元気に育っています。小石川植物園(東京都文京区)にも植えられたそうで、私も探して歩いているのですが、なかなか見つけられません。他にも、小石川公園にはイチョウの精子である「精虫」を世界に先駆けて発見した際に研究対象になった木が残っています。もっと昔なら、もともと関東になかったマテバシイは実を食べるために大昔の人があえて移植したと考えられています。ナガミヒナゲシやヒメツルソバなど、近年話題になった帰化植物に注目しても面白いでしょう。

植物の種類や史跡の由来などを調べるには、公園の管理者の方に聞いてみるのが一番手軽な方法ですが、自分で植物の名前を調べたいという場合は、持ち運びしやすいサイズの植物図鑑を持って行くのがおすすめです。公園でよく見られる植物だけをまとめたものもありますし、絵合わせ感覚で楽しみながら探すことができます。

写真を撮ってあとで調べるのもいいですね。あとで調べやすくするコツは、全体の姿に加えて、木の木肌、花の全体、葉っぱの付き方を撮影しておくことです。これらをおさえておけば、ほとんどの植物が判別できます。

公園 また、森全体で捉えるのもコツです。だいたい森は、「スダジイ」「ブナ」「コナラ・クヌギ」「アカマツ」といった代表的な高木で見分けられるグループで生えるので、一番高い木の種類がわかるとその森の中に生えている木もすぐに見当がつくはずです。

公園

ガイドウォークで「見方」を学んで楽しもう

公園の木という切り口だけでも、ちょっと意識してテーマを持てば、本当に色々な楽しみ方ができます。とはいえ、自分で調べていくのは、難しいところもあるでしょう。そんなときは、公園などで開催されているガイドウォークを利用すると良いでしょう。ガイドウォークには植物観察に限らず、さまざまなテーマがありますので、きっと興味を持てるものがあるはずです。

ガイドウォークに参加した際は、ぜひ、ガイドの方に色々と質問してみてください。植物観察のガイドウォークでも、名前を教えてもらうだけではもったいないと思います。「誰が植えたのか?」「なぜそこに生えているのか?」「他の植物との関係は?」など。必ずしも答えてもらえるとは限りませんが、名前だけ教わるよりも面白いと思います。

私自身がガイドを行う場合は、「植物の立場」に立って紹介することが多いです。植物の目線で、植物同士のせめぎ合いや生き様を、人間になぞらえて紹介する。すると「この木も頑張っているんだね」なんて、参加者の方々にも親しみを持ってもらえます。

木の名前など、知識を紹介するだけではなく、木や森の見方、楽しみ方を教えてくれるガイドさんもいらっしゃいます。色々なガイドウォークに参加してみて、自分なりの「公園の楽しみ方」を見つけられるといいですね。

身近な公園でも魅力がいっぱい!神社や里山も狙い目

身近な公園でも魅力がいっぱい!神社や里山も狙い目 ガイドウォークはある程度大きな公園で行われているものですが、ご紹介したような楽しみ方は、決して有名な公園だけのものではありません。小さな神社にも豊かな森が残っている場所が多いですし、田園地帯には里山もあります。これらの場所は人の手が入っていながら昔ながらの自然が残っているので、散策もしやすく、宮司さんや地主さんなど、その土地の歴史や植物について詳しい人に出会える確率も高めです。 身近な公園でも魅力がいっぱい!神社や里山も狙い目

他にもおすすめしたいのは、「崖線(がいせん)」と呼ばれる、大昔に川が台地を削り取ってできた川べりの段差の部分です。私が好きなのは都内にある国分寺崖線と呼ばれる場所で、ここは住宅地の中にありながら豊かな木々が残っていて、春夏秋冬でさまざまな表情を見せてくれます。特に春の淡く柔らかな色合いは「山笑う」とも表現され、日本の森の美しさを代表する風景の1つだと思いますね。他にも大河ドラマ「真田丸」によく登場していた群馬県の沼田など有名どころはありますが、川がある場所にはどこでもあるはずですので、お近くに自然の残る崖線がないか、ぜひ探してみてください。