傷病手当金は、勤務先などで社会保険に加入している方が、肺がん治療による入院、自宅療養などで休業した際に、健康保険加入者とその家族の生活を支えるための給付制度です。

近藤明美先生

監修:近藤明美先生
近藤社会保険労務士事務所/特定社会保険労務士 キャリアコンサルタント。
(社)CSRプロジェクト(Cancer Survivors Recruiting)にも参画し、長年にわたって、がん経験者の就労相談に取り組んでいる。

病気で働けない方と家族の生活を支えるためのお金

勤務先などで社会保険に加入している方が、病気やけがで仕事ができなくなったとき、その方と家族の生活を支えるために設けられた制度です。業務外の病気やけがで会社を休み、給与を受けられないときに支給されます。支給される金額は、「過去1年間の標準報酬月額を平均した額÷30」の3分の2(概ね給与額の3分の2)です。なお、休んだ期間について給与が支払われたとしてもその額が、傷病手当金額より少ない場合、その差額分が支払われます。

また、健康保険給付として受ける療養以外に、自宅療養であっても、仕事に就くことができないことが証明できれば、支給対象になります。ただし、申請をしなければ受け取れないので、勤務先に依頼して申請してもらうか、または加入している保険者(協会けんぽや健康保険組合)に自分で申請する必要があります。

申請には勤務先(事業者)と医師の「傷病手当金申請書への記入」が必要になり、「働けなかったこと」の証明が必要となるため、後払いになります。通常は、給与の支払いサイクルに合わせて1ヵ月単位で申請することが多く、支給されるまでに、申請後2週間程度間が空きます(保険者によって申請から支給決定までの期間はまちまちです)。つまり、休んでから申請準備を含めると2〜2ヵ月半程度は、貯金やその他の制度を利用して生活費や治療費を確保する必要があります。

傷病手当金を受け取るための4つの条件

傷病手当金を受け取るためには、以下の条件をすべて満たしていることが必要です。

(1)業務外の事由による病気やケガであること
業務による場合は労働者災害補償保険(労災保険)の対象になり、適用されません。また、病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。

(2)仕事に就くことができないこと
医師の診断に加え、会社での仕事の内容などを考慮して判断されます。

(3)連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかったこと
病気で連続して3日間休むと「待期完成」といい、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して手当金が支給されます。待期には、土日・祝日などの公休日の他、有給休暇も含まれ、給与の支払いにかかわらずカウントされます。なお、同じ傷病で一度「待期完成」になれば、その後就労する日があったとしても、再度の待期期間はありません。

傷病手当金の待期3日間の考え方

参考:全国健康保険協会HPより

(4)休業中に給与の支払いがないこと
休業中でも給与の支払いがある場合は対象外となります。ただし、給与の支払いがあっても日額が傷病手当金より少ないときは、その差額分が支給されます。

傷病手当金の支給額は、標準報酬日額の3分の2

傷病手当金の支給額は、1日につき、「傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)の3分の2に相当する額」(1円未満の端数を四捨五入)とされます。だいたい月給の3分の2程度と思えばわかりやすいでしょう。なお、被扶養者の有無で額は変わりません。

受給期間は最長1年6ヵ月、退職後も受け取り可能

支給が始まった日から、最長1年6ヵ月の期間で該当日分を受け取れます。この期間には、給与が一部支払われて日額の差額を傷病手当金として受け取っていた期間も、途中で出勤や有給休暇などがあって報酬が発生した日も含まれます。

傷病手当金の受給期間

参考:全国健康保険協会HPより

傷病手当金を受け取れる権利は2年間で消滅します。1日単位で受給できる権利が発生するため、時効も1日単位で発生し、2年前の該当日の傷病手当金は受け取れなくなります。給与の代わりとなるものなので、1ヵ月(長くても3ヵ月位)ごとに申請することをお勧めします。

なお、途中で退職し、保険加入者の資格を喪失したとしても、被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日(退職日)に傷病手当金を受けているか、受けられる状態ならば、退職後も引き続き支給を受けることができます。ただし、その後再び仕事ができる状態になり、別の職場で仕事に就いた場合、前の職場での傷病手当金は支給されません。

他の制度との兼ね合いで調整がある場合も

傷病手当金は、他の制度との重複により支給停止・調整になる場合があります。

  • 老齢(退職)年金
    退職などで被保険者でなくなった(資格喪失)後に、引き続き傷病手当金を受給しようとしたとき、老齢(退職)年金と傷病手当金の同時受給はできません。ただし、年金の額の360分の1が傷病手当金の日額以下の場合、その差額が支給されます。
  • 障害年金、障害手当金
    障害年金を受ける場合は、期間中でも傷病手当金は支給されません。障害年金(障害厚生年金、障害基礎年金を含む)の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。
  • 労災保険の休業補償給付
    労災保険から休業補償給付を受けている期間に、新たに別の病気になった場合、傷病手当金は支給されません。休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。
  • 出産手当金
    出産手当金を受けている期間は、傷病手当金は支給されません。傷病手当金が出産手当金より高いときは、その差額が支給されます。