肺がん治療薬の種類

肺がんの薬物治療に使う薬剤は、抗がん剤(化学療法)、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤に大きく分けられます。

抗がん剤は、細胞のDNAに働きかけたり、分裂を阻害したりして、細胞の増殖を邪魔する薬です。
分子標的薬は、がん細胞を増やす分子に働きかけて、がんの増殖を邪魔する薬です。
免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞によって免疫があまり働かなくなっている状態を元に戻すことによって、人間の体にもともと備わっている免疫にがん細胞を攻撃させる薬です。

分子標的薬とは

人間の体はたくさんの細胞が集まってできており、また、その細胞はたくさんの分子が集まってできています。たとえば、細胞の中には遺伝情報をもつDNAがありますが、このDNAはたくさんの分子がつながってできたものです。そして、DNAの遺伝情報を読み取って作られたタンパク質も分子でできています。

近年、がんができ、増えるメカニズムを分子レベルで解明する研究が進んでおり、がんの発生と増殖にかかわる分子が次々に見つかっています。分子標的薬は、そのような分子を標的としてねらい撃ち、がん細胞が増えないようにする薬です。

分子標的薬は、標的とする分子によって種類が分かれます。肺がん治療で使用されるものには、がんの発生・増殖にかかわる分子を標的とした薬剤、がんに栄養を与える血管を作らせる分子を標的とした薬剤などがあります。

がんの発生・増殖にかかわる分子を標的とした薬剤には、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的としたEGFR阻害薬、ALK融合タンパク質を標的としたALK阻害薬、ROS1融合タンパク質を標的としたROS1阻害薬、BRAFキナーゼを標的としたBRAF阻害薬、MEKというキナーゼを標的としたMEK阻害薬があります。
これらの薬剤が標的としているタンパク質(分子)は、変異をもつ遺伝子から作り出されたため正常には働かなくなっており、がん細胞を増やす信号を常に発信しています。しかし、薬剤によってこれらの分子の働きを邪魔すると、がん細胞を増やす信号がストップされ、がん細胞を死滅させることができます。

がん細胞は増殖に必要な酸素や栄養分を手に入れるため、新しい血管を作らせるタンパク質(血管内皮細胞増殖因子:VEGF)を自ら分泌し、周辺に新たな血管を作らせます。血管新生阻害薬は、このVEGFの働きを邪魔して血管を作らせないようにする薬剤です。通常、抗がん剤と併用します。

分子標的薬の導入と副作用

肺がんの治療で使用されている分子標的薬のうち、EGFR阻害薬はEGFR遺伝子変異、ALK阻害薬はALK遺伝子転座、ROS1阻害薬はROS1遺伝子転座、BRAF阻害薬とMEK阻害薬はBRAF V600遺伝子変異があるときに効果の高い薬です。このため、小細胞がんと扁平上皮がん以外の肺がんでは、治療を始める前に遺伝子検査を行い、これらの遺伝子変異がみつかったら、変異に応じた分子標的薬を優先的に使用します。

分子標的薬の副作用は標的とする分子によって異なります。EGFR阻害薬では発疹やかゆみ、爪の変化、下痢、間質性肺炎、ALK阻害薬とROS1阻害薬では吐き気や視覚障害、BRAF阻害薬とMEK阻害薬では発熱や悪心、血管新生阻害薬では出血、高血圧などの副作用があらわれることがあります。

分子標的薬を使用できるようになってから、IV期(ステージ4)の非小細胞肺がん患者さんの生存率は抗がん剤だけを使用していた時代に比べ、改善されました。正常な細胞をがん化させ、がんを増殖させる遺伝子変異とその遺伝子が作る分子は、ここで紹介した以外にもいくつか見つかっており、現在、それらを標的とした新たな分子標的薬の開発が進められています。