肺がんのタイプ
肺がんの種類:4つのタイプに分けられる肺がん
肺がんとは
肺がんは肺から始まったがんのことで、正確には「原発性肺がん」といいます。遺伝子が傷ついた異常な細胞(がん細胞)がかたまった「がん」は、増殖してまわりの臓器に影響を与え、他の臓器に転移することもあります。乳がんや大腸がんなど他の臓器から肺に転移してきた場合は「転移性肺腫瘍」と呼ばれ、扱いが異なります。
ここでは、肺がんの種類について詳しく解説しますが、本サイトでは「肺がんの原因」や「初期症状」、「肺がんのステージについて」についても詳しく紹介しています。
その他にも、肺がんに関する詳しい情報は「肺がんを知る」でご紹介しています。
肺がんの種類
肺がんのがん細胞は顕微鏡で見ることによって、4つの組織型に分類されます。一口に肺がんといっても、組織型によってがんの性質や病気の広がり方、治療の効きやすさ等が異なるため、どの組織型に分類されるのかを調べることは非常に重要です。特に非小細胞肺がんと小細胞肺がんとでは、治療の効きやすさやがんの進行速度が異なります。自分の肺がんの種類をきちんと把握して、今後の治療について主治医とよく話し合いましょう。
組織型による分類
組織型 | 特徴 | 発生しやすい部位 | |
---|---|---|---|
非小細胞 肺がん |
腺がん |
|
肺の奥のほう(肺野部) |
扁平上皮がん |
|
肺の入り口近く(肺門部) | |
大細胞がん |
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肺の奥のほう(肺野部) | |
小細胞 肺がん |
小細胞がん |
|
肺の入り口近く(肺門部) |
非小細胞肺がんは、肺がんの中で最も一般的な種類で、その中には腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの3種類が含まれます。徐々に進行し、初期段階では症状が現れにくいため、早期発見が困難な場合があります。
一方、小細胞肺がんは進行が速く、他の臓器にも比較的転移しやすいため、診断された時点で進行していることが多い一方で、薬物療法や放射線治療が効きやすいとされています。
腺がん
唾液の出る唾液腺や胃液の出る胃腺等の腺組織とよく似た形をしているがんのことです。腺がんは、多くの場合、肺の奥のほう(肺野部)の細かく枝分かれした先にできます。女性やタバコを吸わない人にできる肺がんの多くがこの腺がんで、肺がん全体の過半数を占めます。
扁平上皮がん
皮膚や粘膜等、身体の大部分をおおっている組織である扁平上皮によく似た形をしているがんのことです。扁平上皮がんはタバコとの関係がきわめて濃厚で、大部分は肺の入り口に近い肺門部にでき、肺がん全体の約3割を占めます。非小細胞肺がんの中でも、扁平上皮がんとそれ以外のがんとでは、薬剤の効果や副作用の現れ方が違うため、非小細胞肺がんを「扁平上皮がん」とそれ以外の「非扁平上皮がん」に分けることがあります。
大細胞がん
非小細胞肺がんの一種で、扁平上皮や腺等、身体の正常な組織に似たところがないがんのうち、細胞の大きなものをいいます。主に肺の奥のほう(肺野部)の細かく枝分かれした先にできます。大細胞がんは、肺がんのうち数%を占めるくらいです。
小細胞がん
扁平上皮や腺等、身体の正常な組織に似たところがないがんのうち、細胞の小さなものを小細胞がんといいます。小細胞がんは、他の組織型に比べて進行が速く、転移もしやすいのが特徴です。多くは肺の入り口に近い肺門部にでき、肺がん全体の約1割を占めます。
治療方法による分類
非小細胞肺がん
- ・手術による治療が中心。手術の効果を高めるため、術前に薬物療法や、放射線治療と抗がん剤(化学療法)を併用するネオアジュバント療法をおこなうこともあります。
- ・再発予防のために術後に抗がん剤による術後補助療法をおこなうこともあります。
- ・手術をおこなわない場合は抗がん剤と放射線治療を併用する化学放射線療法や放射線治療をおこなうこともあります。遺伝子検査でEGFR遺伝子変異が認められた患者さんでは、化学放射線療法後に分子標的薬での治療をおこなうこともあります。(EGFR阻害薬の働く仕組み)
- ・遠隔転移など、がんがさらに進行している場合は薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)が中心になります。
小細胞肺がん
- ・手術が可能な早期では手術をおこない、その後に薬物療法をおこないます。
- ・限局型小細胞肺がんでは、抗がん剤と放射線治療を併用する化学放射線療法が標準治療です。再発予防のために免疫チェックポイント阻害薬での治療が選択できます。
- ・進展型小細胞肺がんでは薬物(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬)による治療が中心となります。
- ・※大細胞神経内分泌がんの治療は、小細胞がんに準じた治療法が選択されることが多いです。
肺がんの治療方法に関する詳しい情報は以下からご確認ください。
その他、肺がんはがんの発生部位によって肺門型肺がんと肺野型肺がんに分けられます。
発生部位による分類
肺門型肺がん
- ・肺の中心部にあたる、太い気管支が細かく分かれ肺に入っていく部分にできるがん
- ・ヘビースモーカーに多い
- ・初期にX線で発見するのは難しいが、比較的早い時期から咳、痰、血痰などの症状が出る
- ・肺がん検診の喀痰細胞診で発見できることがある
肺野型肺がん
- ・肺門の先の肺の奥のほうにできるがん
- ・タバコを吸わない人にも発生する
- ・症状が出にくいが、比較的早い時期からX線検査やCT検査等で発見できる
肺門型肺がんと肺野型肺がん
肺がんの種類についてのよくある質問
Q:肺がんはどのように分類されるのですか?
治療方法でみると、肺がんは大きく分けて、非小細胞肺がん(腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん)と小細胞肺がんで分けられます。
Q:肺がんの中で最も一般的な種類は何ですか?
肺がんの多くが非小細胞肺がんです。非小細胞肺がんには、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんが含まれます。その中でも腺がんは、肺がん全体の半数程度を占めています。
Q:小細胞肺がんと非小細胞肺がんの違いは何ですか?
非小細胞肺がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分類され、肺がんの中で最も一般的な種類です。徐々に進行し、初期段階では症状が現れにくいため、早期発見が困難な場合があります。一方、小細胞肺がんは進行が速く、他の臓器にも比較的転移しやすいため、診断された時点で進行していることが多い一方で、薬物療法や放射線治療が効きやすいとされています。
Q:肺がんの治療法はどのようなものがありますか?
肺がんの治療法には、主に手術、放射線治療、薬物治療があります。治療法の選択は、がんの種類や進行度合いによって異なります。
手術は、がん細胞を切除することで治療する方法であり、早期の肺がんに対して有効です。
放射線治療は、放射線をがん細胞のある部位とその周辺に照射することで、がん細胞を死滅・減少させる方法です。
薬物治療は抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬に大きく分けられます。抗がん剤は、細胞のDNAに働きかけたり、分裂を阻害したりして、細胞の増殖を邪魔する薬です。分子標的薬は、がん細胞を増やす分子に働きかけて、がんの増殖を邪魔する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞によって免疫があまり働かなくなっている状態を元に戻すことによって、人間の身体にもともと備わっている免疫にがん細胞を攻撃させる薬です。
治療法の選択は、患者さんの状態に合わせて医師と相談することが大切です。
参考:
・日本肺癌学会編:患者さんと家族のための肺がんガイドブック2024年WEB版
・坪井正博:名医が教えるよくわかる最新医学「肺がん」, 2023年,主婦の友社
監修:日本医科大学 呼吸器・腫瘍内科学分野
教授 笠原寿郎先生
2018年7月掲載/2025年8月更新